研究実績の概要 |
目的:ひきこもり経験者(本人)の主体価値と家族が本人に望む主体価値について調査を行った。 調査方法:ひきこもり群として本人101名(性別:男性69.3%、女性26.7%、その他2.0%、平均:35.8±10.3歳、範囲18-64歳)と家族369名(平均年齢65.5±8.7歳、範囲26-89歳)、うち67ペアを対象とした。また、統制群として本人255名(性別:男性68.2%、女性31.8%、その他0%、平均:40.7±11.8歳、範囲18-64歳)と家族259名(平均年齢52.9±8.1歳、範囲24-65歳)、うち60ペアを対象とした。調査内容については、本人に基礎情報、思春期主体価値(Iijima, et al., 2020)、親に基礎情報、思春期主体価値(Iijima, et al., 2020)への回答を求めた。 結果:ひきこもり群本人と統制群本人の価値の重要度を比較したところ、「社会をよくすること」、「良い学校を卒業すること」、「安定した生活を維持すること」といった価値において差が認められた。また、群と親子を独立変数と2要因分散分析を行ったところ、価値「よい学校を卒業すること」に関して、ひきこもり群においてのみ子どもの重要度が高い結果となった。群とひきこもり開始年齢を独立変数とする2要因分散分析を行ったところ、「経済的に成功すること」に関して、40代においてひきこもり群の価値の重要度が低い結果となった。 まとめ:ひきこもり群の本人は「良い学校を卒業すること」を重視せず、「興味を持ったことを探求すること」「安定した生活を維持すること」を重視していることが示された。また、ひきこもり群の本人は「社会をよくすること」「良い学校を卒業すること」を親よりも重視し、親は「身近な人を大切にすること」を子どもより重視していた。さらに、40代からのひきこもり群は、「経済的に成功すること」を重視していなかった。
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