公募研究
社会的価値指向性(SVO: Social Value Orientation)のpro-selfは利己的な行動、pro-socialは利他的な行動をデフォルトとし、戦略的熟慮の結果pro-selfは利他的な行動、pro-socialは利己的な行動を選択するようになることを見いだし、向社会的行動の意思決定プロセスには社会的価値指向性のデフォルトの違いにより戦略に違いがあることを明らかにしている(Yamagishi et al, 2017)。個人の社会的価値指向に従った行動選択(デフォルト)は行動決定までの時間(反応時間)が短いことから直観的に行動選択をしていると解釈できる。一方、社会的価値指向に逆らった行動選択は、行動決定までの時間が直感的行動戦略より長くなることか、熟慮的に行動選択していると解釈できる。つまり、行動決定までの時間により、その戦略の違いを分類することが可能となる。そこで、我々は 習慣的に向社会行動を選択する人と戦略的に向社会行動を選択する人の違いを明らかにするために、成人200名以上を対象としたマルチモーダルMRIによる脳の多面的構造的・機能的解析を行った。その結果、pro-selfはrDLPFCとrVMPFCの機能的結合が強いほど意思決定に時間をかけ向社会的行動を行うことが明らかになった。また、意思決定に時間をかけ向社会的行動を行うほどrDLPFCのODI(神経突起の散乱度)が大きいことも判明した。これらの結果から、戦略的に熟慮した上で向社会的行動を選択する人は、右前頭前野と右内側前頭葉のネットワークをより使用しており、右前頭前野をハブとしたネットワークがより発達していること考えられた。
3: やや遅れている
概ね順調に研究は進んでいるが、年度終わりに新型コロナウイルス感染防止対策による緊急事態宣言が出されたことにより、実験が停止し、在宅勤務となったことから、当初この時期に予定していた実験を行うことができなかった。
HCP準拠のT1、T2、field map、DWI、resting state fMRI 、task fMRIのセットと経済ゲーム中のfMRIを、昨年度に引き続き撮像することを予定している。個人レベルの解析については、実験と同時並行して行う。COVID-19の影響により、ヒトを対象とした対面実験、MRI実験等がすべてストップしている状況である。この状況からいつ脱することができるか不明であるが、既存データの解析と現環境でもできる実験の構築を行う予定である。
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