研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、『学習バイアスの個体差をつくるゲノム発現』を明らかにすべく歌神経核内の単一細胞レベルでの Allelic imbalanceを含む遺伝子発現とF1ハイブリッド個体における学習バイアスの個体差形成との機能相関解析を継続した。 特に、歌運動神経核HVC, RA, Area Xに着目し、これら歌神経核を構成する細胞レベルでのsingle nuclei RNAseq(snRNA-seq)の実施を行い、細胞内遺伝子発現レベル、及び、父母アレルからの遺伝子読み出しに関わる個体差情報の解析を重点的に実施した。その結果、親種キンカチョウとカノコスズメ間でHVC, RA核共に興奮性投射ニューロンに特異的に種差を示す遺伝子群が蓄積していることが明らかになった。つまり、種間で発現量が異なる遺伝子群は、脳領域内の構成細胞にまんべんなくその違いが生じるのではなく、特定の細胞タイプ特異的に発現量変化が起こっていることを意味する。また、この興奮性投射ニューロンにおける遺伝子発現変化は、種差のみならず同種個体差を表象することが分かった。現在、この細胞タイプ特異的な遺伝子発現変化が各個体間によって学習獲得された歌表現型と相関をもっているのか、またその発現量差が遺伝的に由来するのか、発達過程で顕在化するのか、さらなる検証実験を進めている。さらに、種特異性、及び個体差遺伝子発現を興奮性投射ニューロンで示す遺伝子群の父母アレルからの読み出し比率をSNP情報をもとに解析中である。
|