研究領域 | 多様な「個性」を創発する脳システムの統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
19H04889
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
横井 佐織 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (10772048)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 個性 / メダカ / クローズドコロニー / 不安様行動 |
研究実績の概要 |
「臆病」と「大胆」という二つの形質に関し、古くから個性の一つとして研究が進められているが、当該個性を規定する遺伝子の同定には、意外なことに至っていないという現状がある。本研究では、新規クローズドコロニーメダカ系統(ペアー交配ではないが、20世代以上兄妹交配を繰り返し、ほぼ同一の遺伝的背景をもつ)を用いて不安様行動を指標として臆病さ、大胆さを数値化し、その分子神経基盤の解明を目的としている。 これまでに、西瀬戸内地方における野生メダカを由来とした複数種の新規クローズドコロニー系統の不安様行動を定量した結果、臆病な系統と大胆な系統が存在することを明らかにした。通常実験系統である愛知県由来のメダカはこれらの系統の中間型の形質を示したことから、当該クローズドコロニー系統を用いることで、大胆さを規定する遺伝子を新たに同定できる可能性が考えられた。また、大胆系統と臆病系統を掛け合わせたF1系統同士をかけあわせたF2個体を150匹ほど準備し、それぞれ行動実験ののちに尾部からのゲノム抽出を行った。行動実験の結果から、150匹中大胆上位20匹と臆病上位20匹を選定し、その全ゲノムのシーケンスを解析することで、大胆系統と臆病系統との差を担うゲノム領域を探索中である。 これに加え、当該ゲノムシーケンスでは、大規模な遺伝子欠失や逆位挿入、コピー数多型といった種類の差異の検出が難しいため、chromiumシステムを用いたハプロタイプ解析により、大規模構造多型の探索を並行して行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
F2個体150匹から大胆上位20匹と臆病上位20匹を選定し、そのゲノムシーケンスを解析する実験に関しては、当初は標的領域を定め、当該領域のみを濃縮してシーケンシングをすることを予定していた。しかし、共同研究者との話し合いのもと、メダカのゲノムサイズが小さいことから全ゲノムシーケンスも可能であると考えられ、全ゲノムシーケンスに踏み切った。これにより、当初よりも網羅的に遺伝多型の探索が可能になった。 これに加え、chromiumシステムを用いた大規模構造多型の探索を並行して行ったため、予定よりもより多角的な解析が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
F2個体を用いたシーケンシングやchromiumシステムを用いた解析の結果、行動多型を制御すると予想されたゲノム領域を絞り込む。各候補領域については当該領域のみをPCRにより増幅し、シーケンス解析を行うことで、より精度の高い配列結果をもとに多型の確認を行う。確認後はCRISPR/Cas9法を用いて各系統のゲノムを他方の配列と入れ替えることで行動の変化が生じるかを検証し、候補領域の十分性を検討する。
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