研究領域 | 多様な「個性」を創発する脳システムの統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
19H04891
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
城田 松之 東北大学, 医学系研究科, 講師 (00549462)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マイクロエクソン / 選択的スプライシング / RNA-seq / ゲノムワイド関連解析 / 蛋白質構造 |
研究実績の概要 |
マイクロエクソン(ME)は3から30塩基程度の短いエクソンであり、神経組織において顕著に選択的スプライシングを受け、自閉症などの疾患発症に関与している。本研究はMEの選択的スプライシングという現象を軸として、ゲノム配列変化がmRNA、タンパク質の発現調節を経て細胞機能に影響し、ひいては個人の性格や精神疾患などの表現形に影響するかという多階層プロセスについて、ゲノム、mRNAの発現、タンパク質の立体構造、アンケートデータ等に基づく個性の表現型といった種々のデータについて統合解析を行うことで、個人が持つ遺伝的要因と個性の創発の間の大きなギャップを埋めることを目的とする。本研究ではゲノム配列から個性を含めた表現型まで、(i)神経細胞の発生段階における一細胞レベルでのMEの発現制御の解明、(ii)MEの発現制御に関わるゲノム多型の同定、(iii)MEの機能発現についての立体構造に基づくインシリコ解析、(iv)MEの発現制御に関与するゲノム多型と個性の関連解析、の4階層について研究を行うことを目的とした。(i)についてはヒト胎児前頭前野の一細胞RNA-seqデータを用いた解析によって神経組織特異的なマイクロエクソンの発現プロファイルを取得し、遺伝子発現量による細胞種推定と合わせて、神経組織の中でもニューロンにおいてMEの特異的な調節が起こっていることがわかった。(ii)についてはゲノムワイド関連解析によって3つのMEのスプライシングにシスで関与すると考えられるME近傍のゲノム配列変化を同定した。これらについてはスプライシング因子の結合を調節することによる機構が考えられる。また、(iii)についてはin-frameのMEについてタンパク質のアミノ酸配列変化(挿入)を同定し、これらについて蛋白質立体構造データを用いた検討を行った。(iv)については関連解析の準備を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画として立てた目標(i)~(iv)のうち、(i)~(iii)については研究を目標通り進めることができ、また(iv)についても解析の準備を行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
(i)については本年度までに公開された一細胞RNA-seqのデータとVAST_TOOLS等のME検出手法を用いて、fastqファイルをもとに一細胞ごとのMEの発現パターンを解析し、選択的スプライシング(AS)を受けているMEを同定し、一細胞ごとの遺伝子発現量解析による細胞クラスタリングとMEの情報を合わせて、発生段階ごと、細胞種ごとのMEのASパターンを明らかにしたので、次年度は新たな一細胞RNA-seqデータにも同様の計算を行い、解析を発展させる。(ii)MEの発現制御に関わるゲノム多型の同定については本年度までに国際1000人ゲノム計画参加者の遺伝型データと、その参加者の一部のリンパ芽球RNA-seq解析データを用いて遺伝型と各表現型(MEのPercent-spliced In PSI)を用いてゲノムワイドなMEのPSIに対するQTL解析を行った。本年はゲノムワイドに有意であったSNP-MEペアについてゲノム配列上のスプライシングモチーフ解析を進め、MEの発現制御に関わるSNPを明らかにする。(iii)MEの機能発現についての立体構造に基づくインシリコ解析については、MEを含む・含まない場合のタンパク質の機能変化をシミュレーションによって検討する。(iv)MEの発現制御に関与するゲノム多型と個性の関連解析については東北大学東北メディカル・メガバンク機構のデータを用いてゲノムとアンケートデータなどの個性の表現型との関連解析等を行う。
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