ヒト胎生期の脳発生発達の中で、もっともダイナミックかつヒト特異的なプロセスの一つが大脳皮質の脳溝形成である。ヒトの脳溝がどのような機序で形成され、なぜバリエーションが生まれるか、という問いはヒトの脳の発生発達を考える上で重要な研究課題であり、近年、ヒト成人の脳溝パターンと認知機能や神経発達症との関連が報告され始めている。 私達はこれまで、ヒト早産児の脳構造や脳機能の変容を、様々なMRI撮像法を駆使し明らかにしてきた。早産児(特に、超早産児)には、自閉スペクトラム症や知的発達症を含む神経学的後障害が高率(~50%)に観察される。最近私達は、修正40週前後の脳画像解析から、早産児の皮質容量、脳表面積や脳回指数は正期産児と比較し低値であることを明らかにしてきた。しかし、どの領域の、どのような脳溝パターンが早産児の神経学的後障害と関連するのか、個々の脳溝パターンのバリエーションから個別に予後を推定しうるか、とうい課題は未解決である。 本研究課題では、脳構造MRIを用いて、まず、1) 早産出生児に高率な神経発達症と関連する脳溝パターンを6歳時の構造MRIから明らかにし、次に、2) 中心溝に着目し、私たちが見出した特異な中心溝を有する超早産児の臨床像を明らかにすることを目的とした。 結果、45例の早産児のうち、中心溝の形成異常を5例(11%)に認めた。しかし、これらの異常を認める児と認めない児において、6歳児の神経学的予後において明らかな差を見いだせなかった。
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