公募研究
本研究では、動物の性格の個体差に関わる客観指標を確立し、それを種横断的に比較することを目的とする。従来のヒト以外の動物の行動の個体差研究では、ヒトの個人差研究の指標や手法が前提にあり、それらを応用するものであったが、そのために動物の「擬人化」という本質的な 問題が、個性の適切な評価を阻害していたと考えられる。そこで本研究では、ヒトも動物であるという基本的な事実に立ち返って、まず多様な 動物種の行動観察、測定、評定などのデータにもとづく行動の個体差の基本次元を抽出・モデル化する。それをヒトにも応用することにより、ヒト-動物に共通する個体差次元を抽出し、個性のモデル化を目指し、さらに、客観指標として分子指標を追加した。1) 個性の評定方法の開発:動物種横断的なスタンダードをつくり、ヒトをその一員と位置づけることで、進化的背景も視野に入れた動物の個性の成り立ちを解明するために、これまでに蓄積したチンパンジー、ゴリラ、テナガザル、マーモセット、ネコ、イヌ、ウマ、イルカの評定値を活用し、種間の差違について解析した。2) 個性の分子指標の比較:イヌおよびマカクサルにおいて、神経・ホルモン伝達物質の授受に関与する候補遺伝子の多型を見いだし、多数個体で遺伝子型を解析した。イヌでは人気犬種のトイプードルとミニチュアダックスフンドを対象に、性格評定の因子と遺伝子型の関連を解析し、アンドロゲン受容体の遺伝子型と攻撃性に傾向を見いだした。生理指標としては、マーモセットにおいて、体毛中のホルモンの濃度の実験系を確立した。ガーナで家畜化を試みているげっ歯類の、脳内での遺伝子発現の特性についても解析した。
2: おおむね順調に進展している
イヌや霊長類の分子指標を追加し、多数個体の性格評定、遺伝子型、ホルモンレベルの情報蓄積した。
種間比較による共通モデルの作製 チンパンジー、マーモセットなど霊長類、ネコ、イヌなど身近な動物種において、性格の各指標を比較し、共通モデルを作製する。飼い主のバイアスの検出:対象動物に接していない評定者と、飼育係や飼い主などの熟練した評定者で、どれほど評定に差があるかを検討する。飼育施設などで撮影したイヌやネコの短いビデオを用いて、飼い主以外の他者が、対象の動物の性格を評定する。熟練していない評定者であっても飼い主に近い評定をするための客観指標を明らかにする。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (38件) (うち国際学会 14件、 招待講演 6件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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