研究領域 | 多様な「個性」を創発する脳システムの統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
19H04909
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中澤 敬信 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (00447335)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 統合失調症 / 治療抵抗性 / クロザピン |
研究実績の概要 |
本研究では、独自の臨床情報を保持し、クロザピン応答性が異なる患者群に注目し、研究代表者らが開発してきた最新のiPS細胞関連技術により作製済みの患者神経細胞を用いて、クロザピン応答性の相違(効果有り5名、無し5名)に関わる神経機能の分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。また、「iPS細胞の初期化するという特性」を利用して、クロザピン応答性に関わる分子メカニズムの個人差が生まれるメカニズムを明らかにすることが目標である。本年度は、以下の成果を得た。 クロザピン応答性が異なる患者群に注目し、iPS細胞関連技術により作製済みの患者神経細胞を用いて(iPS細胞を疾患発症後の状態(個性創発後)を反映していると考えられる成熟神経細胞に分化させ)、RNA発現解析を実施した(n = 3ペア)。その結果、ZNF578、ZNF808、PGBD3などといった転写関連遺伝子群の発現がクロザピンに応答する患者群由来のiPS神経細胞で高いことが明らかになった。また、やはり転写関連遺伝子であるLHX4の発現が低いことが明らかになった。その他、タンパク質の分解に関連する遺伝子群、免疫応答に関する遺伝子群、サーカディアンリズムに関する遺伝子群、long-non coding遺伝子といった遺伝子について、クロザピンに応答する患者と応答しなかった患者でその発現に相違が見られた。また、当該患者群の疾患発症前の状態(個性創発前)を反映していると考えられるiPS細胞を用いたRNA発現解析も実施し、上記遺伝子群の一部について、iPS細胞でもクロザピンに応答する患者と応答しなかった患者でその発現に相違が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クロザピン応答性不一致のサンプル群(n =3)のiPS神経細胞のRNA発現解析を実施し、3ペアともでその発現が違う遺伝子群を複数個同定することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
さらに、クロザピンの効果があった患者となかった患者の神経機能の違いを詳細に明らかにするとともに、その分子メカニズムを抽出する。また、当該患者の臨床データを解析することによって、患者の実際の病態と明らかにしたクロザピンに対する応答性との相関関係を明らかにする。また、大規模患者バイオリソースのなかから、注目する分子基盤に異常がある患者を選択肢し、当該患者の臨床データを解析するとともに、患者血球系細胞からiPS細胞を樹立し、神経細胞の機能異常が再現できるか調べ、明らかにした分子メカニズムの妥当性を評価する。以上の解析から、脳機能の個性の創発に関わる分子メカニズムの一端を明らかにする。
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