公募研究
個性は様々な生物種で確認されているが、進化による複雑かつ多様な個性の獲得には、脳の進化が重要である。すなわち、脳の進化に関与する遺伝子の同定は、多様な個性形成メカニズムの解明へと繋がると考えられる。Long non-coding RNA(lncRNA)は、進化により爆発的にその種類が増加しており、さらに脳特異的に発現しているものが非常に多いことから、進化による個性の多様性獲得に重要な役割を担っている可能性が高い。また、われわれはこれまでにlncRNAに存在する小さなORFが翻訳されている事例を発見している。これらポリペプチドも脳特異的に発現して、哺乳類などの進化の後期から出現するものが多いことから、進化的に哺乳類以降のみに存在し、脳特異的に発現するポリペプチドの解析を行うことにより、進化による多様な個性形成メカニズムを解明することを目的とする。本年度は以下の研究を行った。(1) これまでに2種のポリペプチド候補を同定しており、これらはいずれも脳特異的に発現して、進化的に哺乳類以降から存在するものであった。そのうち1種に関してFLAGタグ配列をノックインしたマウスの作製を行った。ウエスタンブロットにより、新規ポリペプチドが間違い無く翻訳されていることを確認した。(2) 新規に同定した2種のポリペプチドのノックアウトマウスを作製した。ノックアウトマウスは生存可能で、明らかな発生異常は示さなかった。そこで次に、これらノックアウトマウスの脳を用いてRNA-seq解析及びGSEA解析などを行ったところ、様々なシグナルパスウェイが変化していることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
タグノックインマウスを作製して内在性の発現の証明を行い、さらにノックアウトマウスの作製を行い、RNA-seqを行い脳内のトランスクリプトームのシグナルが変化している事を明らかにした。このことからおおむね順調に進展していると考えられる。
(1) ノックアウトマウスの脳においてトランスクリプトームのシグナル経路の変化が観察されたため、次は行動解析を行う。特に進化と個性の獲得という観点から考察を深めていく。(2) 残りの1種のポリペプチドに関しても同様に、タグノックインマウスを作製して、内在性の発現を確認していく。さらに、ノックインマウスの脳組織を用いて、免疫沈降及び質量分析計を用いて結合タンパク質の同定を行う。結合タンパク質からポリペプチドの分子機構の解明を進めていく。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Scientific Reports
巻: 10 ページ: xxxx
10.1038/s41598-020-62697-2
Cell Research
巻: 29 ページ: 628~640
10.1038/s41422-019-0192-1