研究領域 | 多様な「個性」を創発する脳システムの統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
19H04922
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
井上 由紀子 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第六部, 科研費研究員 (30611777)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / 遺伝子改変マウスモデル / CRISPR/Cas9 / オキシトシン受容体 / ヒト化マウス |
研究実績の概要 |
脳神経系発生発達の多様性は、ゲノムの個体差を基に、環境因子の影響が加わって生み出されると考えられる。そのような「個性創発」メカニズムを客観的・科学的に理解することを目指す本研究領域において、ヒトでは計測できないゲノム改変による脳活動・行動様式の変化を検証可能なモデル動物は重要な役割を担う。特に遺伝学の基盤が充実しているマウスに関しては、近年のゲノム編集技術の進展により、短期間で遺伝子改変個体を作製可能になった。本課題では、最先端のCRISPR/Cas9システムを駆使して、以下の研究と支援を行った。 (1)社会性行動を促進的に制御することが知られるオキシトシンは、脳内に広く分布するオキシトシン受容体を介して、神経細胞の機能を修飾する。オキシトシン受容体遺伝子のイントロン配列内にある一塩基多型が、社会性行動の多様性と関連することが盛んに報告されているが、その神経科学的メカニズムは謎のままである。イントロン配列の個体差と受容体発現様式・社会性行動との関わりを探るため、(A)上述のイントロン配列はヒトとマウスで全く異なるので、マウス個体内でヒト配列を扱うために、マウス受精卵を用いたゲノム編集により、オキシトシン受容体遺伝子座を「ヒト化」したマウス作製を試みている。まず、マウス遺伝子座を完全に欠損した個体を作出し、Fusional PITCh法によりヒト遺伝子座の丸ごとノックインを試みている。(B)上述のヒト・イントロン配列に遺伝子発現調節機能(エンハンサー活性)があるかどうかをマウス脳内で調べるため、マウス受精卵を用いてトランスジェニックマウスを作製し、エンハンサー活性を見出しつつある。 (2)受精卵を用いたゲノム編集による遺伝子改変マウス作製は、従来のES細胞を用いる方法と比べると格段に速く、低コストである。領域内研究課題に対して、マウスモデルを迅速に提供し、研究推進を支援している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Fusional PITCh法によるヒト・オキシトシン受容体遺伝子ノックインマウス作製に関しては、当初の想定よりもノックイン効率がよくないため難航している。マウス飼育棟の工事等の事情で、マウス受精卵を用いた実験が制約を受けたことも一つの理由である。 一方で、ヒト・オキシトシン受容体遺伝子・イントロン配列をプラスミドDNAにクローニングし、それを用いてトランスジェニックマウスを作製し、マウス脳内でレポーター活性を検出する方法により、遺伝子発現調節活性(エンハンサー活性)を見出す実験は進んでいる。 また、領域内の研究者へゲノム編集により作出したモデルマウスを提供する支援業務は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
Fusional PITCh法によるヒト化マウス作製については、引き続き条件を検討する。トランスジェニックマウスを用いたエンハンサー解析により重点を置いて進め、ヒト・オキシトシン受容体遺伝子・イントロン配列に遺伝子発現調節機能があることを初めて示すことを目指す。
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