公募研究
2019年度には、雄の求愛歌のうちパルスソングのキャリア周波数が異常になり、パルス間隔も有意に長くなる突然変異体、croakerの原因遺伝子のクローニングに成功し、この遺伝子がCalmodulin-dependent transcription activator (Camta)タンパク質をコードすることがわかった。Camtaは細胞内Ca2+が上昇したときに標的遺伝子の転写を活性化するとされており、集団飼育時に他個体と接触するなどによってニューロンでの転写を惹き起こす因子として有望である。個体間相互作用の経験がCamtaタンパク質に媒介されてfruの転写、ひいてはFruM標的の転写へとつながり、ニューロン膜特性変化をもたらすという興味深い可能性の検討が待たれる。
2: おおむね順調に進展している
集団生活か、単独生活か、という経験の差をニューロンが暗号化する仕組みとして、他個体との接触刺激による感覚ニューロンでの転写活性化が考えられる。この仮説を検討する有力なツールを得ることができ、今後新たな展開が期待できるため。
これまでの研究で、P1ニューロンに生ずる飼育環境依存的な生物物理学的変化の実体が明らかとなった。すなわち、非シナプス膜でのK+チャンネル電流の増減が生じ、その少なくとも一部はK+チャンネル遺伝子の発現変化に根差している。したがって次に明らかにすべきことは、環境条件の違いがいかにしてニューロンでのチャンネル遺伝子発現変化に反映されるのか、具体的な機構を理解すること、そして、観察されるK+電流の変化がP1ニューロンの入出力特性をどのように変容させるのかを理解することである。この二点に答えを得るべく、研究を推進する。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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