公募研究
本研究では、ナビゲーション行動中の線虫の全神経活動の観察に加えて、機械学習等による特徴抽出や時系列予測技術などを活用して、神経活動や行動を解釈する枠組みを構築することを目指す。2019年度は、ナビゲーション行動中の線虫の全神経活動の観察を実現するため、高速4Dイメージング顕微鏡の試作機について改良を進めた。試作機を用いた撮影の結果、線虫の行動に伴って光シートの照射方向と線虫の角度の関係が変わると励起光のムラが生じることが判明していた。この問題を解決するため、光シートの照射角度を変更できる回転光学系を導入したが、撮影した画像の輝度の低下や輝度ムラの増大など新たな問題が生じた。既存のスピニングディスク型共焦点顕微鏡に自動追尾ステージを組み合わせることで、これらの問題を回避しつつ、行動中の線虫の全神経活動が観察できる可能性があるか、検討をすすめた。また線虫の神経活動を神経回路レベルで解析するために、線虫の神経細胞を同定する技術の開発を進めた。これまでに、細胞の位置情報のデータベースを構築し、細胞の同定に適した線虫株を作出して、細胞同定の過程を自動化し、GUIに組み込んで公開した。これらの成果をまとめて論文として発表した(Toyoshima et al., 2020, BMC biology)。また線虫のナビゲーション行動の詳細な解析を行った。線虫は後退運動とそれに引き続く方向転換を行うことで塩走性行動を実現していることが知られている。ASG感覚神経は塩を直接関知しないが、こうした後退運動の後に活性化し、走性行動に影響していることが明らかになかった。またこの方向転換の角度はこれまでランダムだと考えられてきたが、詳細な解析の結果、実際には一定のルールがあることが明らかになった。これらの成果をまとめて論文として発表した(Jang et al, 2019, PNAS)。
3: やや遅れている
自由行動中の線虫の神経活動を包括的に観測するために必要な顕微鏡の開発が遅延したため。
既存のスピニングディスク型共焦点顕微鏡に自動追尾ステージを組み合わせることで、行動中の線虫の全神経活動が観察できるよう、検討・改良をすすめる。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
BMC Biology
巻: 18 ページ: 30
10.1186/s12915-020-0745-2
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 116 ページ: 18673~18683
10.1073/pnas.1821716116