研究領域 | 生物ナビゲーションのシステム科学 |
研究課題/領域番号 |
19H04934
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐倉 緑 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (60421989)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 空間認識 / 採餌行動 / 8の字ダンス |
研究実績の概要 |
本研究は、ミツバチの巣内でのコミュニケーション行動と野外での採餌飛行を継時的に観察し、その関係を解析することで、個体における空間認識の様式とそれが形成される過程を明らかにすることを目的としている。ドイツ・ベルリン自由大学との共同研究により、高調波レーダーシステムを用いて、ミツバチの野外での採餌飛行軌跡を記録をトラッキングし、採餌・コミュニケーション履歴と環境中のランドマークや餌場の質との関連を探る計画である。 2019-2020年度にわたる新型コロナ肺炎の感染拡大のため、予定していたドイツでの野外実験は遂行できていない。しかしこれまでに同様の実験環境で取得したデータを保有しているため、それらを用いて巣内でのコミュニケーションと採餌飛行の履歴との解析を国内ですすめている。巣内のおよそ500個体の継続観察データを用いて、各個体のダンス行動、ダンス追跡行動および餌場訪問の履歴を網羅的に解析した。その結果、初めての餌場に訪問する場合と既知の餌場に訪問する場合とで巣内でのダンスおよびダンス追随の行動パターンや採餌飛行での探索領域に明確な違いがあることが明らかとなった。現在、1個体の軌跡の変容に着目した詳細な解析をすすめており、軌跡の直線性や探索パターン発現の頻度等の違いを調べている。特に観察期間中に訪問する餌場を変えた複数の個体については、餌場選択直前の巣内行動と直後の採餌飛行軌跡のデータから、ナビゲーションの意思決定に関連する行動パターンを見出すことを目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ肺炎の感染拡大のため、予定していたドイツでの野外実験は遂行できていないが、すでに取得済みのデータを用いた解析を集中的に行うことで、個体の採餌履歴とコミュニケーションとの関係について一定の知見が得られている。本研究の目的のひとつである1個体の軌跡の変容についても少ないながらも解析できており、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きドイツでの高調波レーダーを用いた実験の可能性を探るとともに、現時点で持っている行動データの解析をすすめる。また高調波レーダーを用いた実験の実施が難しい場合に備えて、現所属機関においても巣内行動のモニタリングシステムを整備中である。これを使って餌場の質が動的に変化する場合の行動パターンの変化について、新たに実験を行う予定である。
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