本年度は、バーチャル空間内を探索するマウスの広視野カルシウムイメージングにより、行動状態依存的な大脳皮質ダイナミクスの解析を行った。皮質領野間の活動の相関を計算することにより、領野間の機能的結合を明らかにし、歩行状態から静止状態及びその逆の遷移に伴う機能的結合の変化を明らかにした。また自閉症モデルマウスを用いて同様の実験を行うことにより、正常マウスと自閉症モデルマウスの機能的皮質結合のパターンの違いを明らかにした。さらに、自由行動下で新規マウスと相互作用する社会行動を示すマウスの島皮質領域からヘッドマウント型蛍光顕微鏡を用いてカルシウムイメージングを行った。行動課題としてホームケージ実験とリニアチャンバー実験の2種類を用いた。この実験により、新規マウスと相互作用するときに活動が亢進する細胞群と抑制される細胞群の2つの新しい細胞群を見出した。活動が亢進する細胞群の一部は、相手マウスに接触する身体部位や社会相互作用中に自身が歩行しているか静止しているかという行動状態の違いに対して選択的な反応を示すことを明らかにした。リニアチャンバー実験では、両端のチャンバーに配置したマウスと物体の位置を入れ替えても、マウスの入っているチャンバーに選択的に反応する細胞群が同定できた。しかしチャンバーの絶対的な位置に反応する細胞はほとんど見られなかったことから、社会相互作用をコードする細胞は、場所とは関係なく社会行動に対して選択的に反応することが明らかとなった。
|