公募研究
(1) Gタンパク質共役型受容体(GPCR)の活性化機構の解明GPCRがリガンド依存的にGタンパク質など下流のエフェクター分子を活性化する機構を解明するため、これまでに構造が明らかになっていない、GPCRとリガンドのみが結合した状態のNMR解析をおこなった。常磁性緩和促進増大(PRE)法を用いた解析から、GPCRにリガンドのみが結合した状態では、Gタンパク質などが結合した状態とは第6膜貫通ヘリックスの構造が大きく異なっていることがわかった。また、様々なリガンドが結合した状態のNMRスペクトルから、GPCRの活性化状態には複数構造が存在すること、それらの活性化状態によって、GPCRのシグナル伝達活性が定量的に説明できることが明らかになった(Nat Chem Biol 2020)。また、GPCRの活性化は脂質により制御を受けること、およびその機構についても構造生物学的に解明できた(Sci Adv 2020)。(2) Gタンパク質とエフェクター複合体の解析GPCRがGPCRキナーゼ、アレスチンなどのエフェクター分子を活性化する機構を解明するため、エフェクター分子の安定同位体標識およびNMR解析をおこなった。イソロイシンまたはメチオニンのメチル基を1H, 13C標識することで、エフェクター分子の構造をNMRにより解析する条件を確立した。NMRシグナルの帰属はイソロイシンまたはメチオニンを1残基ずつ変異することによりおこなった。アレスチンに対してGPCRを添加することで、一部のNMRシグナルに変化が観測されたことから、アレスチン-GPCR複合体のNMR解析条件を確立できたと考えた。また、GRKに対して、スピンラベルを導入したGPCRを添加した結果、GRKのNMRシグナル強度が変化したことから、GRKとGPCRの相互作用を検出できたと考えた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画では、GPCRキナーゼ、アレスチンなどのエフェクター分子について、GPCRとの複合体を調製し、そのNMR解析条件を確立することを目指していた。実際に、エフェクター分子に対してGPCRを添加した条件で、NMRシグナルの変化が観測されたことから、おおむね計画通りに進捗していると判断した。また、当初の計画にはなかったが、リガンドのみが結合したGPCRのNMR解析についても進捗があり、論文への発表をおこなった(Nat Chem Biol 2020、Sci Adv 2020)。
これまでに、NMR法を用いて、エフェクター分子とGPCRとの相互作用を検出できていることから、今後、詳細な解析を進め、相互作用様式やエフェクター分子の構造変化を明らかにする。これにより、GPCRによるエフェクター分子の活性化を定量的に説明することを目指す。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Science Advances
巻: 6 ページ: eaay8544
10.1126/sciadv.aay8544
Nature Chemical Biology
巻: 16 ページ: 430~439
10.1038/s41589-019-0457-5
http://ishimada.f.u-tokyo.ac.jp/public_html/index_j.html