公募研究
細胞内シグナル伝達は、細胞レベルの機能調節を行うことによって、個体発生過程における組織の形成だけでなく、組織再生や老化といった現象にも関与しているが、細胞内シグナル伝達という分・時単位の現象が、組織再生や老化といった、日単位、さらに月・年単位の現象へと変換される機構、すなわち、小さな歯車の運動が、大きな歯車の運動に変換されるようなシグナル伝達の時間軸変換の機構は全く解明されていない。本研究では、表皮の再生・老化現象における表皮幹細胞動態をモデルとし、幹細胞内シグナル伝達経路の活性化または減弱化→幹細胞動態変化→組織再生・老化という過程を、EGFRシグナルによる幹細胞動態の変化の速度論的解析とその反応拡散系モデル、さらに多細胞間相互作用の物理モデルによる細胞集団動態予測を融合することで、シグナル伝達の時間軸変換の機構を数理的に理解することを目指す。またマウスの皮膚創傷治癒モデルや老化モデル、さらには糖尿病性潰瘍の臨床サンプルを検証することで、老化や糖尿病による組織再生不全が、シグナル伝達の時間軸変換のどこに起因するかを明らかにする。今年度は、EGFRシグナルによる表皮幹細胞動態の変化について、そのシグナル伝達機構の下流に存在する幹細胞動態制御因子の同定とその速度論的解析を行うことに成功した。また、階層的シミュレーションによる表皮幹細胞の集団動態予測に成功した。さらに、マウス皮膚潰瘍サンプルから、皮膚再生に関与するシグナル伝達経路の候補を同定することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
ヒト表皮幹細胞動態を制御する分子機構について、その詳細を解明することが出来た。また、マウス皮膚潰瘍サンプルの解析から、皮膚再生に関与するシグナル伝達経路を同定することが出来た。
ヒト表皮幹細胞動態を制御する分子機構と、細胞動態についての基本的な知見が得られたので、今後は、シグナル伝達の反応速度論的解析と、細胞集団動態の数理モデルとの融合を目指す。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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