生体内のシグナル伝達ネットワークは、外部環境の動的変化に適応して恒常性維持を司る動的システムであり、その恒常性の破綻は多くの場合に病態や疾患を伴う。近年、様々な生命現象でシグナル活性の動的パターンが発見されたが、複数のシグナル伝達経路の共存・協調を可能にする動作原理は明らかではない。そこで本研究では、発生過程の一過的な組織である未分節中胚葉における、FGFおよびNotchシグナルの動的パターンの共存に着目した研究を行った。そして、片方のシグナル活性を青色光制御しながら両方のシグナル活性の細胞応答を同時に生細胞イメージングするための融合的基盤技術を確立し、FGF/Notchシグナル間の動的パターンの統合・情報処理機構を解明し、シグナル伝達ネットワークの動的制御様式の包括的理解に貢献することを目指した。 具体的には分節時計における転写因子Hes7の発現振動と、FGFシグナル伝達経路の協調的なダイナミクスに着目し、マウスES細胞にHes7転写発光レポーターによる計測モジュールと光遺伝学による制御モジュールを遺伝子導入し、試験管内分化誘導することで光制御と光計測が同時に可能な分節時計のin vitro実験系を構築した。 そして、周期的な光照射によって分節時計を光同調させることに成功した。また培養条件を検討することで、シグナル勾配の存在が示唆される遺伝子発現パターンを示すin vitro実験系を見出した。
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