研究領域 | 数理解析に基づく生体シグナル伝達システムの統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
19H04963
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
間木 重行 東邦大学, 医学部, 助教 (90708546)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | がん / 薬剤耐性 / 数理モデル / オートファジー |
研究実績の概要 |
本研究計画では、オートファジー関連分子の活性化バランスが生み出す細胞死・耐性獲得の運命選択を数理モデルにより解析することで、抗がん剤耐性獲得機構における細胞選択の原理・特徴の理解を目指す。 はじめに、耐性獲得過程モデル化のためにタモキシフェン処理が短期で誘導するオートファジー誘導及びシグナル伝達の変化を測定し、モデル化に必要な時系列データを取得した。現在、実験データが再現可能な数理モデルの構築・最適化を、先行研究のモデル改変により実施している。 続いて、耐性獲得過程におけるオートファジーのflux量を測定したところ、tamoxifen未投与群に比べて投与3~9週の細胞群の方が単位時間・単位面積当たりのオートファゴソーム量の増加が大きく、さらに9週の耐性化細胞よりも6週の耐性前駆細胞の方がfluxが大きいという結果が得られた。この傾向は、先行研究で得られていたRNA-seqの結果と相関していた。また、各耐性獲得ステージにいる細胞集団の一細胞遺伝子発現データを解析したところ、耐性獲得後の細胞集団はヒストン脱メチル化酵素の発現が高いタイプとオートファジー関連分子の発現が高いタイプの2タイプが存在することが見出された。以上の結果より、タモキシフェン処理による乳がん細胞状態の変化は、オートファジー活性の異なる未処理細胞・耐性前駆細胞・2種類の耐性化細胞のサブポピュレーションからなる状態遷移モデルにより説明できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成31年度/令和元年度は、がん細胞の抗がん剤に対する短期応答数理モデルの構築及び検証を予定していたが、モデルの最適化及び検証は現在進行中である。一方で、次年度予定していた耐性細胞のサプポピュレーションモデルに関しては既に研究の方向性が定まっている。本年度の途中で所属研究研究機関が変更になったことに伴い実験・計算機ともに研究環境の構築から取り組む必要があったことを差し引いて考えると、全体の進捗に大きな影響を与えるほどの遅れはなく、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、前年度の進捗を踏まえて、がん細胞の抗がん剤に対する短期的な応答の数理モデル構築を完遂する。続いて、作成したモデルを元に抗がん剤長期投与による耐性獲得の数理モデル構築を行う。数理モデルの表現型モジュールに耐性 前駆状態・耐性型への状態遷移を追加し、各状態において別の細胞内システムモジュールを設定するようにモデル改変を行う。作成したモデルが実験データを再現可能なパラメタセットを探索した後感度解析を行うことで、細胞死・生存の表現型に大きく寄与する反応や、耐性獲得に大きく寄与する反応を推定する。最後に得られた推定結果を実験的に検証し、新規生物学的知見を見出す。
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