公募研究
細胞分化における選択的な遺伝情報獲得のメカニズムに関与する膨大な数の転写・転写制御因子、そして、それらが結合するゲノム上の制御配列の組み合わせが同定されてきた。これら多種多様な分子の組み合わせは、大自由度の系でありながらも、そのダイナミクスは必要な応答の種類に限られる少数のモードによって表現可能であると考えられる。そこで、本研究ではまず、一細胞トランスクリプトーム解析により得られたデータから時間情報を推定し、並び替えた一細胞プロファイルを用い、系の時間発展を表す作用素の推定を試みる。推定した作用素から主要なモードを抽出することで、分化や組織損傷等の環境変化に対するエピゲノム・トランスクリプトームの応答の低コストなシミュレーションを可能にする技術基盤の開発を目指す。本年度は、組織損傷等の環境変化に対するエピゲノム・トランスクリプトームを解析するため、一細胞・少数細胞エピゲノム計測技術(ChIL)を応用し、骨格筋損傷をモデルとした組織レベルのエピゲノム解析法の開発を進めてきた。また、ホッジ分解を応用したシングルセル・プロファイル追跡法については、実装を効率化することで、数千から数万細胞レベルのスケールで解析が可能となった。さらに、擬似的な時間情報を補った単一細胞データから遺伝子発現のダイナミクスを抽出していくために、疎で離散的な単一細胞発現データから、解析・解釈の容易な連続潜在変数(内部状態)を推定する手法を開発した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、データ取得とダイナミクス解析手法の開発を並行して進めることができており、進捗はおおむね順調である。
本年度は、独自技術であるChIL法を応用した組織レベルのエピゲノム情報のダイナミクスの解析について、論文発表を目指す。また、骨格筋分化をモデルとし、ダイナミクスを構成する少数のモードを抽出することで、クロマチン構成因子と遺伝子発現変化の対応をはかる。最終的に、時系列データを記述可能な少数のモードを決定することで、組織損傷等の環境変化に対するエピゲノム・トランスクリプトームの応答の低コストなシミュレーションを可能にする技術の開発につなげる。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (4件)
Elife
巻: 8 ページ: pii: e46667
doi: 10.7554/eLife.46667.
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