研究領域 | 数理解析に基づく生体シグナル伝達システムの統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
19H04972
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
南 敬 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 教授 (00345141)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | NFAT / ダウン症因子 / 血管内皮細胞 / 血流刺激 / カルシウムシグナル / feedback 制御 / 数理モデル / heterogeneity |
研究実績の概要 |
本研究では初代血管内皮細胞 (HUVEC) を中心に、VEGF 血管新生性・炎症刺激で中核となる NFAT isoform を同定し、Ca-Cn-NFAT/DSCR-1 シグナル軸の減衰振幅反応の予測や、包括的な分子マシナリーを時系列非線形数理モデルで確立する。更にNF-kB との協調的なシグナルネットワークの予測・実証に加え、DSCR-1 の構造学的知見に基づいた NFAT 阻害活性と腎毒性(副作用)の病態相関やその病態予測が可能な数理モデルの構成を計画している。 2019年度は VEGF シグナルから NFAT フィードバックインヒビターのDSCR-1sが誘導される時間差の振幅の最初の動態を数理パラメーターを設定して数式からシュミレーションすることに成功した。また、生化学手法からはNFAT1 と4で血流刺激後の核内移行の時間差や振幅が違うことを始めて具体的に証明することに成功している。 そこで 続けてNFAT1と4 の特異的抗体や GFP fusion-NFAT construct をもとに、VEGF 刺激での NFAT ファミリーの動的変化が違う現象を In cell analyzer やCalcium imager での核内移行のタイミングの違いにて検証後、その生理的意義は下流応答遺伝子発現制御の違いから検討を進める計画にしている。現状では血流刺激に応じ、NFAT4 が先ず早期に10分以内に核内移行を始め、その後核内と核外を迅速にシャトルすること、15-20分後から NFAT1 が核内移行を始め、これはNFAT4 と異なり、かなり長いスパンで核内に居続けることが判明している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血管内皮細胞では NFAT ファミリーの全ての発現が認められるが、そのファミリー間の違い(NFAT1 とNFAT4 )がshare stress での応答で顕著にみられたことは始めての報告である。この数理モデルにて再現可能なパラメーターが設定出来れば、今回の科研費の目標がほぼ完遂できるものと思っている。ただ、実際の各NFAT ファミリーの発現比を内皮細胞で定量することはプロテオミクスの感度が上がっているにも関わらず困難でパラメーターの最適化が難しくなることも考えている。
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今後の研究の推進方策 |
NFAT ファミリーのカルシウムシグナル活性化での応答(核内移行の挙動の違い)において、その生理的意義について証明する必要がある。先ずは即時型応答転写因子群(Egr3など)の誘導パターンが各々の NFAT ファミリーにて関与度合いが異なっている可能性が考えられるので、内皮細胞に VEGF 刺激を加え、カルシウム流入を促進した時に、NFAT1-4 のsiRNA にて予め個別のNFAT アイソフォームをノックダウンしておくと、下流遺伝子の誘導にどのような変化が認められるか、qPCR 等を用い解析を進める予定である。一方、NFAT の実際の発現量はシングルセル当たりどの程度であるのか、NF-kB と同程度の場合などの既知パラメーターを用いてもある程度擬似的に数理計算で設定可能か検討を始める。 他の研究プロジェクトがマウスを用いている in vivo 解析であるのに対し、本計画が in vitro を中心にしているので、COVID19 の問題が深刻化しても、試薬供給や研究者の健康、実験環境にトラブルが生じなければ、より優先的に進めることが出来ると予想している。
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