研究実績の概要 |
NF-kB には IkB が発現して負のフィードバックループが成り立っており、この発現制御によりNF-kB シグナルが減衰振動を起こすシステムについてこれまでに報告されている (Hoffmann, Science 2002)。一方NF-kBと並び免疫制御でよく知られた NFAT (nuclear factor for actvated T cells) 転写因子についてはそのフィードバックシステムを数理にて明らかにした実例は知られていない。我々はこれまでに内皮 VEGF シグナルの包括的解析を通じ、calcineurin-NFAT シグナルが早期に最大に誘導され、それを適切に調節するダウン症関連因子 (DSCR)-1 の役割について生理・病理学的観点から明らかにしてきた。そこで、実際の正常培養内皮細胞に VEGF 刺激を加え、NFAT が核内移行し、DSCR-1 が発現誘導され、今度はカルシニューリン活性が負に制御されて NFAT 核内移行が減弱し、DSCR-1 発現自体が抑制されるこのサーキットでの数理計算を行った。この新学術班での数理への教育活動に参加し、東大伊東、阪大鈴木の指導を受けて解析を進めた。さらにこの計算結果が VEGF 刺激早期の実際の NFAT1、DSCR-1 のタンパクの挙動と一致し、NFAT シグナルの減衰振動のメカニズムを数理にて解明するその一例を公表することに成功した (Muramatsu, et.al. BBRC 2021)。また VEGF シグナルだけでなく、calcium シグナルが顕著に誘導されるshare ストレスの始まりにおいても、この系が成り立つことも明らかにした。一方、NFAT にはファミリータンパクが存在し、NFAT1 とNFAT4 では核内移行の時間的タイミングが異なる。この系については新たな数理のパラメーターを作製中である。
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