研究領域 | 数理解析に基づく生体シグナル伝達システムの統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
19H04974
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
深田 正紀 生理学研究所, 分子細胞生理研究領域, 教授 (00335027)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | パルミトイル化修飾 / ZDHHC / ABHD17 / シナプス / 数理解析 |
研究実績の概要 |
パルミトイル化脂質修飾は、普遍的な翻訳後修飾でタンパク質の輸送や機能を制御する。パルミトイル化反応は他の脂質修飾とは異なり可逆反応であり、外界刺激により制御されている。近年のプロテオミクス解析により、多種多様なパルミトイル化タンパク質が次々と報告されているが、そのシグナル伝達機構は殆ど不明である。私共はパルミトイル化関連酵素を同定し、APEGS法というパルミトイル化状態の定量法を独自に開発し、パルミトイル化タンパク質の制御機構の解明に取り組んできた。本研究では、神経シナプスの中心的足場タンパク質であるPSD-95等をモデルとして、パルミトイル化シグナル伝達機構の全容を明らかにする。具体的には、(1)パルミトイル化反応の制御機構の解明、(2)パルミトイル化反応が可逆的である意義を解明する。2019年度は、タグ付きABHD17のノックインマウスを用いて、ABHD17結合タンパク質を多数同定し、パルミトイル化シグナルの解明に向けた重要な手がかりを得た。また、脱パルミトイル化酵素ライブラリーを活用して、ミトコンドリアにおける脱パルミトイル化酵素としてABHD10を同定した(Bryan Dickinson 博士との共同研究:Nat Chem Biol誌に発表)。さらに、私共のパルミトイル化酵素ライブラリーを活用した国際共同研究により、CCR5(HIV-1ウイルスの受容体)のパルミトイル化酵素(ZDHHC3,7)を同定し、その輸送機構を解明した(Franck Perez博士との共同研究:Science Advances誌に発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 脱パルミトイル化酵素ABHD17の結合タンパク質をショットガン法にて、網羅的、特異的に同定した。 (2) 新規の脱パルミトイル化酵素としてABHD10を同定した。 (3) CCR5(HIV-1ウイルスの受容体)のパルミトイル化酵素を同定し、その輸送機構を解明した。
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今後の研究の推進方策 |
パルミトイル化反応のシグナル伝達機構を明らかにすることを目的として、2つの研究計画を推進する。 (1)パルミトイル化反応の制御機構の解明 パルミトイル化酵素ZDHHC2のノックアウトマウスにおけるパルミトーム解析を行い、PSD-95以外の基質や活性制御分子を探索する。また、タグ付きABHD17のノックインマウスを用いて同定した様々な結合タンパク質の解析を進め、ABHD17の活性制御機構の解明や新たな基質の同定を進める。 (2)パルミトイル化反応が可逆的である意義を明らかにするために、パルミトイル化サイクルを受けないPSD-95変異体に関する解析を進める。
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