近年の人工知能研究では,新しい環境やタスクに直面しても素早い学習を可能にするための「メタ学習(学習のための学習)」の開発が注目を集めている.これら論文の序論では,ヒトの持つ高いメタ学習能力を模倣することによって人工知能のメタ学習を実現する研究戦略が記されているが,実際にはメタ学習の脳内基盤は十分には明らかになっていない.特に,運動学習においては,環境の統計的性質や情動が学習スピードを向上させる現象が報告されている.しかし,これら現象を統一的に説明する運動学習における「メタ学習」の計算原理と脳内基盤は全く明らかになっていない. 本研究の目的はヒトが環境やタスクに応じて適応的に学習パラメータ(学習スピードや探索ノイズ)を調整する脳内メカニズムを,人工知能分野で開発が進んでいるメタ学習機構との対照を通じて,数理モデルの構築,行動実験、脳機能イメージングから多角的に解明することを目的とする..本研究では,記憶の更新量に応じて報酬を制御する新しい運動メタ学習実験パラダイムを開発し,行動データと脳機能イメージングデータの解析や計算論的モデルとの比較を通じて,脳における運動メタ学習機構の統一的な理解を行う. これまでの研究で、誤差情報の観測の有無によって、運動学習スピードが変化するような条件を発見した。このようなメタ学習に加えて、環境の変動性がどのように運動学習のスピードに影響を与えるのかに関する計算論的モデルを提案した。 報酬駆動型の運動学習中の脳機能イメージングデータを用いて、DCM解析を行い、運動学習に関わる脳部位間の機能的結合を明らかにした。さらに、動物実験へつなげるために、マウス用のロボットマニピュランダムを開発した。
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