研究領域 | 人工知能と脳科学の対照と融合 |
研究課題/領域番号 |
19H04979
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池上 高志 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10211715)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 自己シミュレーション / ニューラルネット / アンドロイド / 予測モデル / エンパワーメント |
研究実績の概要 |
脳のモデルに自己シミュレーションを導入することは、現在、脳モデルを考える上でひとつのプロトタイプとなっている。かつて心理・物理学者のHelmholtzの考えた脳のモデルは、内部で生成される「世界モデル」と現実世界からのインプットとの差異をもとに動くシステムで、現代におけるFristonや谷らの予測コーディングとしての脳モデルにつながっている。一方で、自己シミュレーションは、Hod Lipsonらが示したようなホメオスタシスな自己の維持に不可欠である。 こうした前提から出発した本研究は、生命の進化を認知的な階段を登っていくもの、と仮定した。その段階は、Behavior-Empowerment-Generalizationである。Behaviorとは行動の生成(行動で環境が変化できる)こと。Empowermentとは、その行為の結果の情報の知覚ができること。生物はこれを最大化しようという仮説がある。Generalization は、そうした行為と知覚の組み合わせを汎化すること。われわれはこれらの段階が、単純なスパイク神経細胞間の学習だけ(刺激を避ける原理)から説明できるかについて、モデルシミュレーションの結果をベースに説明した。 実際、この認知的な階段の上昇を議論する上で、各段階の認知現象を調べている。ひとつには、この刺激を避ける原理をもとに、身体の境界を自分で境界が作れる、というAutopoiesis をモデル的に説明した。またEmpowermentをもつエージェントを制作して、それを強化学習で実装しその振る舞いを議論した。 現在はわれわれが開発したアンドロイドを使って、これら認知過程を実装しつつ、人が人としての個性を獲得していく過程を研究中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに3つの論文を発表し、今、それらの実装をもとに、アンドロイドの自己シミュレーションをモデル化・実装中であること。
|
今後の研究の推進方策 |
Alterというわれわれが阪大の石黒研と共同開発したヒューマノイドを用いて、自己シミュレーションを実装する。この実験は2020年の5月の時点で進行中である。Alterは視覚センサーとしてカメラを両眼に搭載し、目の前の人の動きを模倣できる。深層学習と模倣を、自己シミュレーションというテーマを中心に実験を進める予定である。
|