研究領域 | 人工知能と脳科学の対照と融合 |
研究課題/領域番号 |
19H04988
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
鮫島 和行 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (30395131)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 強化学習 / 神経情報表現 / 電気生理 / 意思決定 / 線条体 |
研究実績の概要 |
次に示す文脈に応じて多様な行動空間での意思決定を必要とする課題をニホンザルに訓練し,線条体からの単一神経細胞記録を行なった論文を刊行した. 動物に,色や形などの複数の属性を持つ視覚刺激を複数呈示し,その中から1つを選ばせる.選んだ図形に応じた量で液体報酬を動物に与える.ただし,文脈として報酬量に関連する属性(色・形)を固定し,一定の試行数その関連性を保持して選択させる.学習中に報酬に関連する属性を特定できれば,その属性と報酬との間の価値関数を学習し,価値を比較することで少ないサンプルで効率良く選択を行うことがきる.この課題を遂行中のニホンザルの線条体の神経活動を電気生理学的手法によって観測したところ,特定の属性の情報のみを持つ細胞を,認知的に意思決定する以前と以後の両方の時間帯で発見し,認知的意思決定前には選択肢そのものもの情報表現が存在し,意思決定後では選択された図形の特定情報を持つことを明らかにした. (2)上記課題に,新たな属性が加わった場合線条体の情報表現を調べるために,3つの刺激属性を持つ課題を訓練中である.しかし,長期の課題訓練を必要とする.この目的のために,個別ケージで飼育中にも同様の課題訓練できる「動物日常オペラント装置」を開発した.この装置は,刺激呈示をし,タッチパネルに反応することで液体または固体報酬を得る事ができる装置を,飼育ケージの前面に設置し,課題訓練を日常的に半自動的に行う装置を導入した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
複数属性を持つ選択肢からの意思決定が行える課題を提案し,その行動学的な結果から,動物が運動を選択する前に認知的な意思決定が起きることを,神経活動から見出した結果を論文化した.これは2つの情報のどちらかが報酬予測に寄与する課題であり,それが交互に切り替わることを長期に訓練した結果であると考えられた.この結果を受けて,新たな属性が加わった場合の神経活動を調べるための動物を用いた意思決定課題の訓練を継続中である.研究計画では,初年度で訓練を終えて次年度に前頭前皮質や大脳基底核からの神経活動記録を行う予定であった.訓練が遅れており,COVID-19の影響もあり一部実験が予定より遅れている. また,これらの複数属性のいずれかが報酬や意思決定に関与し,それが切り替わる場合の理論的枠組みやモデル化が一部遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の状況により,実験の実施状況などが不透明な部分があるが,上記の進捗から比較的遅れており,動物実験を必要としない理論的研究や,モデル化によるシミュレーション研究を中心にすえ,これまでとった神経データの再解析などを進めるとともに,電気生理実験再開時のための動物の訓練や,行動データ解析による研究を進める予定である.
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