公募研究
脳は、時々刻々と入力される刺激に対し、絶え間なく般化と予測を行っている。この予測符号化に関する数学的モデルは皮質の層構造や神経細胞レベルの役割を考慮したものまで様々提案されている。近年ではこのようなモデルを機械学習に適用したディープラーニング(深層学習)により大規模データ解析に大きな進展がみられている。しかし脳内での実装についてはまだ不明な点が多く、とくに全脳レベルでの動力学的性質についてはまったくわかっていないのが現状である。本研究では、広域皮質脳波計測と計算モデルベースのパラメータの定量化を組み合わせ、予測符号化の皮質内情報処理メカニズムをあきらかにする。2019年度は、2個体のマーモセットに聴覚オドボール刺激を提示し、刺激提示中の皮質脳波の計測を行った。また、階層ベイズモデルを用いて刺激時系列に基づく予測および予測誤差の定量化を行い、計測した皮質脳波と比較したところ、予測誤差は聴覚皮質が、予測は前頭前野がより係ることが示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
新たなデータの取得、階層ベイズモデルを用いた予測符号化に係る変数の定量化およびその神経活動の相関解析を計画通り遂行した。上記に加え、国際共同研究として聴覚Local-Global paradigmを用いた皮質脳波の計測を行い、階層的な予測に係る神経活動の解析に着手した。また、感覚記憶に影響するとされるN-methyl-D-aspartate receptor (NMDAR) 拮抗剤であるケタミンを投与して聴覚オドボール刺激の提示を行い、皮質脳波計測を行った。音刺激処理に対するケタミン投与の影響についてはすでに結果を取りまとめて国際論文誌に投稿中である。
階層ベイズモデルを用いた解析を深化させ、音刺激の構造的複雑さに対するモデルのパラメータの検討を行い、成果をまとめる。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 7件、 招待講演 2件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
https://www.riken.jp/collab/ip/08882/index.html