研究実績の概要 |
令和2年度は、2年計画の2年目として、意欲に応じて行動を発現・調節する過程に関わる前頭葉を中心としたネットワークの機能を明らかとするために、2頭のサルの腹内側前頭前野、前頭眼窩野、腹側線条体、から記録した神経細胞活動を解析した。そして、これらの脳領域が期待値を知覚し、その知覚に基づいて行動を調節する過程に関わる神経メカニズムを調べた。 神経細胞活動の解析の結果、前頭眼窩野と腹側線条体が同時に期待値を計算することで、期待値の知覚に関わることが明らかとなった。期待値に基づいて意欲を調整する過程に、前頭眼窩野-腹側線条体の神経回路が関わると考えられる。この期待値の計算に関わる神経メカニズムの成果を、原著論文として2報の報告を行った。 1) Neural population dynamics underlying expected value computation. *Yamada H, Imaizumi Y, Matsumoto M. J Neurosci. 2021 41(8):1684-1698. 2) Tonically active neurons in the monkey dorsal striatum signal outcome feedback during trial-and-error search behavior. Inokawa H, Matsumoto N, Kimura M, *Yamada H. Neuroscience. 2020 446:271-284. 1)では、特に、上述の前頭眼窩野と腹側線条体の期待値計算の仕組みについて詳細な報告を行った。2)では、線条体の価値表現を中脳ドーパミン細胞と比較する内容の報告を行った。以上のように、価値の知覚と行動発現を担う脳機能を明らかとした。
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