公募研究
本研究では、マウスがランニング・ホイール(RW)を好んで回転させる特性に着目し、運動に対するモチベーションの形成、維持機構を明らかにすることを目指す。本年度は以下の成果を得た。1)運動に対するモチベーションの維持機構を明らかにするために、RWをコンスタントに回転させるようトレーニングしたマウスに、ドパミンD1あるいはD2受容体アンタゴニストを全身投与したところ、いずれによってもRW回転数は減少した。しかし、運動機能全般も減弱することがオープンフィールド試験により観察された。一方、各種5-HT受容体拮抗薬を全身投与した場合には、2Cおよび2AアンタゴニストによってRW回転数は減少し、1Aアンタゴニストによって回転数が増加することを見出した。また、これらの作用は運動機能全般の低下あるいは上昇によらないことを確認した。したがって、運動に対するモチベーションの維持に複数の5-HT受容体を介した神経伝達が関与することが示唆された。2)運動に対するモチベーションの形成機構を解明するために、RWトレーニングの1日、9日、および、23日以上の各時点においてcFos発現細胞を免疫染色により検出し、細胞数を計測することによって活動変化を示す脳部位を調べたところ、内側前頭前野、側坐核コア・シェル、および、背内側線条体においてcFos陽性細胞数はタイミング依存的に増加することを見出した。したがって、これらの部位がトレーニングの進捗に応じてモチベーションの形成に関与する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
おおむね研究実施計画に記載した計画通りに進んでいるため。
種々の5-HT受容体が運動に対するモチベーションの維持に関わることが明らかになったため、今後は、どの脳部位に作用することによってモチベーションを制御するのかを、各アンタゴニストの脳内局所投与によって明らかにする。また、関与する脳部位でのシナプス、細胞活動に与える5-HT受容体刺激の作用を電気生理学的に明らかにする。また、cFos陽性細胞数の増加がモチベーションの維持を反映するのか否かについて、トレーニング完了後のマウスを用いて検討する。具体的には、トレーニング23日目のマウス、23日目にロックされたRWに単回接触させたマウス、ロックされたRWに複数回接触させたマウスの脳におけるcFos陽性細胞数を比較することで、運動の効果とモチベーションの効果を区別し、cFos発現がモチベーションに関わることを証明する。さらに、cFos陽性細胞が認められる脳部位における神経可塑性を電気生理学的に解析する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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