昨年度は、ストレスに関連した脳領域・末梢組織におけるCASTおよびELKSの発現を調べ、中枢神経では主にCASTが、末梢組織では主にELKSが発現していることを明らかにした。また、神経活動のマーカーであるc-Fosのfluorescence in situ hybridization (FISH)により拘束ストレス時に活性化する脳領域を探索した結果、視床下部の室傍核が顕著に活性化し、室傍核のCAST陽性細胞のうち約30%が活性化することを明らかにした。 本年度はさらなる追加解析として、まずCASTファミリーメンバーのELKSの室傍核での発現を調べたが、ELKSの顕著な発現は見られなかった。また、c-Fos陽性細胞の特徴を明らかにするため、副腎皮質刺激ホルモン放出因子 (CRF)、CRF receptor1(CRFR1)、CRF receptor2(CRFR2)、およびオキシトシン(OXT)の計4種類のプローブを新規に作製した。そのうちCRFとOXTはFISH染色において顕著なシグナルが見られたが、CRFR1、CRFR2プローブはシグナルが得られなかったためCRF、OXTとc-Fosの二重FISH染色を行った。その結果、CRF陽性細胞の約60%、オキシトシン陽性細胞の約40%が拘束ストレスにより活性化していることが明らかとなった。さらに、室傍核以外の領域として、交感神経系のストレス回路に関わる延髄腹外側部についてもc-FosのFISH解析を行った。その結果、室傍核ほどではないがわずかにc-Fosの発現が増加した。また、尾側のほうがc-Fos陽性細胞の数が増える傾向が見られた。以上のことから室傍核において拘束ストレスにおいて活性化する神経細胞はCRF陽性細胞がOXT陽性細胞よりも多いこと、尾側延髄腹外側部も活性化しやすいことが明らかとなった。
|