研究領域 | 「意志動力学(ウィルダイナミクス)の創成と推進」に関する総合的研究 |
研究課題/領域番号 |
19H05015
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
繁冨 英治 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (00631061)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 意欲 / アストロサイト / カルシウム / Gq-DREADD / GqPCR / 海馬 / 化学遺伝学 / グリア伝達物質 |
研究実績の概要 |
うつ病などストレスによって誘発される精神疾患において、アストロサイトの機能低下が報告されている。アストロサイトのGqタンパク質共役型受容体(GqPCR)を介したシグナル及びアストロサイト由来のグリア伝達物質の低下が動物のうつ様行動を引き起こすことから、アストロサイト機能低下が意欲低下と関連する指摘されている。しかし、アストロサイト機能を増強することにより動物の意欲に基づく行動を増強できるか、すなわち、アストロサイトを介した意欲制御の可能性については不明なままである。アストロサイトのGqPCRシグナルをGq-DREADDを用いて操作し、その動物行動に与える影響を検討した。ストレス応答や不安との関連が指摘されている腹側海馬に着目した。AAVを用いて腹側海馬アストロサイト選択的にhM3Dqを発現させた。コントロールとしてGFP発現群及びsaline投与群を用いた。急性脳スライス標本を作成し、DREADD agonist 21によりhM3Dqを刺激すると大きなCa2+シグナルが惹起された。DREADD agonist 21を腹腔内投与し、行動学的評価を行った。腹側海馬アストロサイトのGq-DREADDは、オープンフィールド試験における場所嗜好性に影響を与えなかった。海馬依存的な意欲行動の指標として巣穴堀試験を行ったが、Gq-DREADDはこの行動に影響を与えなかった。一方、慢性的なGq-DREADD刺激によって、尾懸垂試験における無動時間及び無動エピソードが低下した。以上の結果から、腹側海馬アストロサイトにおけるGq-DREADD刺激は、不安行動や本能的な意欲活動には大きな影響は与えないが、抗うつ様の作用を惹起することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
行動実験に必要なセットアップは速やかに設置され、また、AAV導入実験の効率化も図られ、おおむね計画通りに実験は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
Gq-DREADDによる腹側海馬アストロサイトの機能操作が動物行動に及ぼす影響については近日中に必要なデータを取得でき、Gq-DREADD実験の最適条件が得られると考える。この実験条件下において、Gq-DREADDによるアストロサイト機能の操作が、アストロサイトの遺伝子発現に及ぼす影響及び細胞外環境に及ぼす影響についてデータを取得する。
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