公募研究
本研究では、社会忌避行動や不安様行動の亢進を引き起こす過度のストレス反応と、情動行動にほとんど影響しない程度のストレス反応に関わる神経活動変化や脳領域、細胞集団を特定するため、急性ストレス暴露の時間・回数に基いて、ストレスの強度に応じた行動変化と神経活動変化を脳全体で網羅的に解析する。社会的敗北ストレスの強度(時間・回数)に応じた行動への影響を解析した結果、強度の増大に伴って、単回ストレス暴露では認められない社会性行動の減少と、オープンフィールド試験における不安様行動の増加が認められた。これらストレスの強さに応じた脳内の活動変化を解析するため、最初期遺伝子c-fosのプロモーター制御下に不安定型かつ核局在型の蛍光蛋白質EGFPを発現するFos-EGFPマウスを用いて、ストレス暴露時に活動する細胞を蛍光標識し、高精細全脳イメージング技術FASTを用いてEGFP陽性細胞の分布を解析した。また、全脳領域の解析をより効率化するため、組織自家蛍光を利用した画像解析方法や、マウス30個体分のFAST全脳平均リファレンス画像を構築した。各領域におけるEGFP陽性細胞数を比較した結果、一部の領域において顕著な活動変化が認められた。下辺縁皮質や前辺縁皮質、扁桃体基底外側核におけるEGFP陽性細胞密度は、単回ストレス暴露と連続5回ストレス暴露で約1.5倍程度であったものの、橋や視床下部の複数の神経核などでは2倍以上に変化することが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
研究実施計画に沿って、組織自家蛍光を利用した画像解析方法や、30個体分のFAST全脳平均リファレンス画像を構築することで解析スループットを向上し、ストレスの強度に応じて異なる反応性を示す脳領域の候補を得ることができたことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
変化が認められた脳領域のいくつかは、個々の細胞レベルで神経投射の出力先が異なることが知られているため、活動依存的な神経投射標識方法などを用いたストレス反応性細胞の投射先の特定や、化学遺伝学的手法を用いた介入実験を計画している。
すべて 2019
すべて 学会発表 (2件)