研究領域 | 「意志動力学(ウィルダイナミクス)の創成と推進」に関する総合的研究 |
研究課題/領域番号 |
19H05024
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
松本 英之 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (50511383)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | システム神経科学 / 電気生理学 / 光遺伝学 / ラット / 意志力 / モチベーション |
研究実績の概要 |
我々のやる気は、環境から得られる報酬の頻度や大きさに強く影響される。では、どのような脳の仕組みが、環境要因の一つである環境報酬率と、目標に向かって努力して諦めないやる気、すなわち「意志力」を結びつけるのだろうか?申請者の近年の研究から、中脳に分布するドパミン細胞が、環境報酬率に依存して、活動のモードを修飾させることが明らかになりつつある。この結果は、環境の報酬率と意志力をつなぐ仲介役として、中脳ドパミン細胞の信号モードの修飾が関与することを示唆する。一方、これまでの研究は、動物が頭部固定されたいわば“静的な”状態でのドパミン細胞の活動記録や、薬理学的な実験結果に基づく数理モデルが多く、内側から湧き起こる「意志力」がドパミン細胞のどのような活動のモード、パターンによって生み出されるのかは明らかではなかった。 この問題を明らかにするため、本年度はまず、動物が自由に自らのペースで意志力を発揮できる行動課題を考案し、その課題中のドパミン細胞活動を記録することで、環境報酬率、意志力、ドパミン細胞の応答、の三つの関係について検証した。報酬量が動物の意志力、すなわち試行開始の意欲、運動維持の意欲といった各要素に与える影響を調べるため、行動によって得られる報酬量を確率的に増減させる行動課題を考案した。ビデオ撮影、各ポートに設置した赤外線センサ、プレアンプ内臓の加速度計を用いて動物行動を計測し、動物の意志力を客観的に定量化、評価した。次に、この行動課題中のドパミン細胞活動について、電気生理学と光遺伝学を組み合わせて計測を行なった。現在、神経活動の試行毎のデータの解析、および追加のデータを取得中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自由行動課題中の動物の頭部に複数のシリコンプローブ等の電極や光ファイバーを配置した上で、大規模な神経活動記録を行い、さらに光遺伝学を組み合わせて細胞種あるいは投射先を同定する実験は、一般的に立ち上がるまでに時間が必要である。申請者はすでに、電気生理学と光遺伝学の融合技術を自由行動課題中の動物に適用し、神経活動の長時間にわたる大規模同時記録、および細胞種の同定、投射先の同定を行う実験に成功している。また、大規模計測されたユニットデータから細胞種を同定する解析手法も確立している状況にある。以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに取得したデータの解析、および追加のデータの取得を行う。意志力と相関して変化するドーパミン信号を光遺伝学的に時間特異的に操作し、意志力を制御するドーパミン信号を検証する。
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