研究領域 | 都市文明の本質:古代西アジアにおける都市の発生と変容の学際研究 |
研究課題/領域番号 |
19H05032
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
阿部 尚史 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (20589626)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | タブリーズ / アルメニア教徒 / 少数派 / イラン王権 / トルコマン王朝 / サファヴィー朝 / 勅令 / 請願 |
研究実績の概要 |
2019年度は、海外における史料調査を、9月にイギリスの大英図書館とケンブリッジ大学附属図書館で実施し、ペルシア語写本を調査した。2020年3月にもアルメニアのマテナダラン(マシュトツ手稿本研究図書館)でも史料調査を予定していたが、コロナウィルスの蔓延による渡航中止に追い込まれた。 2019年度には、主に17世紀以前のイラン王権とアルメニア教徒との関係についての研究を行った。とくにこれまでほとんど研究が進んでいないと思われる、イランのトルコマン王朝およびサファヴィー朝とアルメニア教徒との関係を考察し、その成果の一部を、東京大学駒場キャンパスにおける研究会で発表した(「ムスリム社会における少数派とムスリム王朝:15-16世紀イランのアルメニア教徒」)。この報告ではアルメニア教徒が時の政権に提出した請願書とそれに対する君主からの返答を検討し、両者の関係の推移を分析している。 このほか、エジプト・アレキサンドリアのアレキサンドリア図書館にて8月に開催された "Network and Urban Landscape in Historical Perspective"と題する国際ワークショップに参加し、“Tabrizi Families in Quarters”と題する報告を行った。この報告では、とくに19世紀後半に作成された世帯帳簿を分析して、イラン第二の都市であるタブリーズの市における世帯構成、家族の在り方、職業状況と都市空間との関係を論じた。このなかで、少数派であるキリスト教徒の存在に関しても議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既に入手した史料の分析を進めているところであり、すでに国内の研究会および国際会議で一部成果を報告することができた。今後は成果の活字化も積極的に進めていく予定である。 ただし、コロナウィルスの蔓延の影響で、3月にアルメニアで史料調査ができなかったため、今後のさらなる研究の遂行のために分析する史料の不足が気がかりである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、15,16世紀のアルメニア教徒に関する研究をまとめていくと同時に、19世紀に、アルメニア教徒とイラン王権(カージャール朝)との関係が劇的に変化する様子を考察する予定である。具体的には、イラン・ロシア戦争により、アラス川以北がロシア領となるのだが、ロシアとの戦争がイラン領内のアルメニア教徒に与えた影響を明らかにする。8月にスペインのイラン学国際学会に参加して、研究報告を行い、9月にイランとアルメニアで調査を行う予定である。ただし、コロナウィルスの関係で、これらの海外出張が実施できるか、楽観視はできず、今後の研究推進が大幅に変更を余儀なくされる可能性がある。
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