研究領域 | ハイドロジェノミクス:高次水素機能による革新的材料・デバイス・反応プロセスの創成 |
研究課題/領域番号 |
19H05044
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中村 崇司 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (20643232)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | プロトンセラミックス燃料電池 / 空気極 |
研究実績の概要 |
本研究では高効率エネルギー変換可能なプロトン伝導性セラミックス燃料電池の空気極における反応領域および反応機構を明らかにして、高性能空気極の設計指針を確立することを目的としている。 それに向け、今年度は酸化物イオン-電子混合導電性材料(La,Sr)CoO3を対象に、電極/電解質の二相界面の寄与と電極/電解質/気相の三相界面の寄与を別々に評価することが可能なパターンモデル電極を作製し、二相界面と三相界面のどちらが主要な反応場として機能するのかを検討した。当初の予想と異なり、電気化学特性評価より(La,Sr)CoO3がわずかなプロトン伝導性を有しており、二相界面が反応場として機能することが明らかになった。これは(La,Sr)CoO3電極がプロトンセラミックス燃料電池空気極として高い電極特性を示す理由の一つであると考えられる。また電極内に三相界面を導入することで電極特性が大きく向上することから、(La,Sr)CoO3電極では主要な電極反応場が電極/電解質/気相の三相界面であることを明らかにした。 また空間分解能を有したマイクロX線吸収分光測定により、酸素ポテンシャル分布(酸素の反応駆動力)が界面から数マイクロメートル広がっていることを明らかにした。これは空気極反応(酸素にプロトンが結びついて水が生成する反応)が進行する際、酸素の供給が三相界面近傍で活発に起こっていることを示唆する結果である。 以上をまとめると、プロトン伝導性が低く電子伝導性が高い材料を空気極として利用する場合には、電解質とのコンポジット化など三相界面をできるだけ大きく確保することが高性能化につながると考えられる。 来年度はプロトン-電子-酸化物イオン混合導電性を有したダブルペロブスカイト材料を対象に研究を進展させる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は酸化物イオン-電子混合導電性電極のモデルケースとして(La,Sr)CoO3を対象として研究を進めた。電極/電解質の二相界面の寄与と電極/電解質/気相の三相界面の寄与を別々に評価することが可能なパターンモデル電極の作製に成功し、研究を予定通り進めることができた。当初の予想と異なり、(La,Sr)CoO3はわずかではあるがプロトン伝導性を有しており、電極/気相の二相界面も反応場として機能することがわかった。一方、(La,Sr)CoO3電極に電極/電解質/気相の三相界面を導入すると電極特性が大きく向上することが分かった。つまり、電極反応をスムーズに進行させるには電極/電解質/気相の三相界面が必要であることが明らかになった。これは(La,Sr)CoO3電極が高い特性を示す理由の一つであると考えられる。 X線吸収分光測定により評価した酸素ポテンシャル分布(=酸素の反応駆動力)は三相界面から数マイクロメール程度の広がりとなっていた。これは空気極反応(酸素にプロトンが結びついて水が生成する反応)が進行する際、酸素の供給が三相界面近傍で活発に起こっていることを示唆する結果である。 これらをまとめると、プロトン伝導性が低く電子伝導性が高い材料を空気極として利用する場合には、電解質とのコンポジット化など三相界面をできるだけ大きく確保することが高性能化につながると考えられる。 以上の成果より、本研究はおおよそ研究計画通りに進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究成果より、「プロトン伝導性が低く電子伝導性が高い材料を空気極として利用する場合には、電解質とのコンポジット化など三相界面をできるだけ大きく確保することが高性能化につながる」という電極設計指針を得ることができた。一方、プロトン-電子混合導電性材料を電極として活用すると、電極反応場が三相界面から二相界面に拡張し、二相界面と三相界面の両方が電極反応場として機能することが予想される。この場合、適切な二相界面/三相界面比やそれを実現する電極構造など、新たな設計指針が必要となることが予想される。 そこで今後の研究では、プロトン-電子-酸化物イオン伝導性を有したダブルペロブスカイト系材料を対象とする予定である。 電極材料を変えると、モデル電極作製の最適パラメーターが変わることが懸念されるが、これまでのノウハウをもとに電極作製条件の最適化を進める。そのうえでプロトン-電子混合伝導性材料空気極の反応領域および反応機構についての知見を得る。 さらにモデル電極の電気化学特性により、二相界面反応と三相界面反応の寄与を明らかにし、主要な反応場を効率よく利用するための指針を得る。そのためにはポテンシャル分布の知見も必要であるため、位置分解能を有したマイクロX線吸収分光測定により酸素ポテンシャル分布の評価を進める予定である。 以上の結果と今年度の成果を総合的に解釈して、プロトン伝導性セラミックス燃料電池空気極の高性能化の指針を確立し、高効率エネルギー変換デバイスの実現に貢献する。
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