研究領域 | ハイドロジェノミクス:高次水素機能による革新的材料・デバイス・反応プロセスの創成 |
研究課題/領域番号 |
19H05046
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
近藤 剛弘 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (70373305)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ホウ化水素 / 水素貯蔵 / 炭素ドープ / 2次元物質 / 2次元シート |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、我々が世界で初めて単離生成を実現して2017 年に論文発表した新規二次元物質であるホウ化水素シートを基軸として新しい高密度水素貯蔵材料を開発することです。本年度は研究計画に沿って、炭素ドープをしたホウ化水素シートの合成と評価を行いました。研究協力者の東京農工大の山本准教授が作成した、ホウ素の一部(0~15%)が炭素と置き換わったMgB2-xCx をスタート物質として、我々が筑波大でイオン交換を行い、炭素ドープホウ化水素シートを生成しました。これをフーリエ変換赤外吸収分光、X 線回折、透過電子顕微鏡観察、走査電子顕微鏡観察、X 線・紫外線光電子分光(XPS・UPS)を駆使して解析し、試料の組成、構造、電子状態を調べ、水素放出特性(放出温度・耐久性・繰り返し特性)について昇温脱離測定(TPD)により調べました。この結果、炭素ドープによって、ホウ素のコアレベルピークのエネルギー(B1s)が変化することがXPSにより示され、水素の放出温度が低温化する様子がTPDにより観察されました。現在、領域内の複数の研究者と共同研究を行いながら、この炭素ドープホウ化水素シートの特性についての解析をさらに深めています。また、ホウ化水素が室温であっても紫外線照射によって水素放出できることを東工大の宮内研究室をはじめとする複数機関との共同研究によって見出しました。また、ホウ化水素シートが固体酸触媒として機能することを見出しました。また、NIMSの冨中氏をはじめとした共同研究により電気伝導特性が分子吸着により大幅に変化することも見出しました。これらはそれぞれ、Nature Communications誌、ACS Omega誌、Chem誌に論文が掲載されました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿った手法により、炭素ドープホウ化水素の合成に成功し、また水素放出特性が炭素ドープによって変化することを見出すことに成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
炭素ドープ量の関数として水素放出特性の変化を評価し、ホウ化水素シートを基軸とした高密度水素貯蔵材料を構築するうえで必要な化学的修飾に必要な条件を基礎科学的に導くと同時に実現させます。この際、領域内の共同研究を引き続き積極的に行い、ハイドロジェノミクス領域の発展のケース研究となるように努めていく予定です。
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