公募研究
ヒドロゲナーゼは遷移金属を含む活性部位(触媒サイト)において水素分子をプロトンと電子へと可逆的に変換する役割を果たす酵素であり、ある種の嫌気的生物はその電子エネルギーを利用し生命システムを維持してきた。この機能は言わば生体内燃料電池であり、ヒドロゲナーゼの機能を理解することは、ハイドロジェノミクスの分野を生物系へ拡張する上で極めて本質的である。本研究では、完全酸化状態である[NiFe]ヒドロゲナーゼの分子状水素による再活性化機構を明らかにするため、嫌気性条件下で得られた新たなX線、および中性子線結晶構造解析結果の構造の妥当性、およびその安定性を検証することを目的としている。また、水素分子との反応についての知見を得ることで、再活性化の可能性を検討した。従来、再活性化が遅いNi-Aとして同定されていた構造は酸素により過剰に酸化された構造であったが、今回得られた構造は反応サイクル中のそれと類似しており、QM/MM計算による網羅計算により、NiとFe間を架橋する酸素種はO2-、Niの価数は+3、スピンは低スピン状態であることが同定された。また、再活性化が速いNi-BについてはNiとFe間を架橋する酸素種はOH-、Niの価数は+3、スピンは低スピン状態であることが同定された。本研究により、新規構造の妥当性を検証するとともに、結晶構造解析からは観測が困難な水素の空間配置の決定、および遷移金属の価電子数とスピン状態が明らかとなった。R02年度は特に、完全酸化された構造からの水素による再活性化過程について、QM/MM計算を行なった。酸化状態では、活性サイトに水素分子の吸着が直接起こらないことを確認した。したがって、分子状の水素ではなく原子状、あるいは自ら生ずるオキソニウムイオン、ヒドロニウムイオン、あるいは電子移動が起こる必要があることを意味している。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (14件) (うち国際共著 1件、 査読あり 13件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
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