公募研究
パルスレーザー堆積法を用いて、スピン軌道モット絶縁体Sr2IrO4のエピタキシャル薄膜(約50nmの膜厚)をLSAT基板上に作成した。作成したSr2IrO4薄膜を用いて、水素イオンビーム照射による水素ドープとin situ温度可変伝導度測定を行った。100Kの低温での水素イオンビーム照射によって、抵抗が約3桁減少することが分かった。水素ドープ後の抵抗の温度変化は、可変領域ホッピング伝導を示すことが分かった。さらに、温度を室温まで上げることにより、抵抗が非可逆的に減少することが分かった。水素イオンビーム照射実験前後でX線回折実験やホール効果の測定を行い、結晶構造変化やキャリア濃度・易動度の変化を調べた。水素照射後の試料は、面間のc軸方向に約1%格子が広がることが分かった。また、面内の格子定数に変化は無かった。ホール効果の測定によって、キャリア濃度が室温で約2桁、200Kでは3桁近く増加していることが分かった。ホール係数の符号から、キャリアは電子であり、水素によって高濃度の電子がドープされたことが分かった。分光測定によって、低波数側に新たな吸収が確認された。さらに、薄膜内部での水素の濃度分布を調べるために、タンデム加速器を利用して核反応分析を行い、実際に高濃度の水素が導入されていることを確認した。第一原理計算で水素の欠陥形成エネルギーを評価してもらったところ、酸素置換型の水素や頂点酸素付近の侵入型水素が安定であることが分かり、実験で得られた水素による電子ドープと矛盾しないことが分かった。以上のことから、低温水素イオンビーム照射によって、結晶構造にほとんど影響を与えずに、非常に効率的にキャリアドープ出来ることが分かった。その内容をまとめて学術雑誌に投稿した。また、ルチル型TiO2薄膜への水素ドープにより、可逆的な抵抗のスイッチングが可能であることを見出した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件) 学会発表 (3件)
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