研究領域 | ハイドロジェノミクス:高次水素機能による革新的材料・デバイス・反応プロセスの創成 |
研究課題/領域番号 |
19H05055
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田中 秀和 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (80294130)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 遷移金属酸化物 / プロトン / ナノ領域反応場 |
研究実績の概要 |
本研究では、究極的に軽く、小さいイオンであるH+(プロトン)に着目し、その強力な還元能による価数制御より数桁に及ぶ物性変化を示しうる遷移金属酸化物を利用/探索し、プロトンによる強相関電子物性の制御と反応場の高速拡散に基づく、従来の限界を超えた電界による巨大かつ高速動的物性制御を実現する新奇な【酸化物プロトニクス】デバイスを創製する。 (1)パルスレーザ蒸着法により水素誘起絶縁体現象示すNdNiO3薄膜の形成を行い、良好な相転移を示すエピタキシャル薄膜の成膜条件を確立した。 (1) パルスレーザ蒸着法によりSmNiO3, NdNiO3薄膜を作成し、非対称電極(プロトン触媒ドープ用Pt電極および電気物性測定Au電極)を付与した2端子デバイスにおいて、電界を印加しながら触媒プロトンドーピングを行い、電界アシストプロトンドーピング現象を見出した。拡散係数解析により、電界より拡散するプロトンの移動度を見積もった。 (2) 非対称電極を付与した二端子SmNiO3薄膜デバイスを作成し、電界スッチング動作を確認した。またその温度依存性、印加電圧、電圧印加時間依存性の定量的な評価を行なった。 (3)共同研究の推進:A05班東大福谷グループの核反応法 (Nuclear Reaction Analysis、NRA) による水素濃度の定量的評価を行い、電気伝導度とプロトン濃度の相関を見積もった。予想より多大な水素がドープできることを見出した。またA05班濱田グループとを示すNi酸化物の電子状態の第一原理密度汎関数計算を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロトニクスデバイスの基本動作は既に確認出来ており一層の高効率化を進めるための微細加工技術の開発もプロトタイプの構造が出来ている。また領域内連携による共同研究も、NRA測定による水素濃度評価、交流電気輸送特性計測によるイオン移動度評価、第一原理計算による電子状態評価などに着手することが出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に得た、非対称電極を付与した二端子SmNiO3薄膜デバイスにおける、電界スッチング動作の温度依存性、印加電圧、電圧印加時間依存性および、共同研究(A05班東大福谷グループのとの水素濃度-電気伝導度相関、A03班分子研小林グループとのSmNiO3/NdNiO3のプロトン移動度測定)を遂行し、デバイス特性を規定する理論式を構築し、巨大性能を発現する条件を明らかにする。さらに薄膜デバイスのナノ構造化(電極ギャップ間のナノスケール化および酸化物チャネルのナノワイヤ化)を行い、一層の高性能化を実現する。最終的には第一原理計算により酸化物プロトニクスデバイスに最適な物質系を見出し、デバイス構築にフィードバックする。
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