研究領域 | ハイドロジェノミクス:高次水素機能による革新的材料・デバイス・反応プロセスの創成 |
研究課題/領域番号 |
19H05058
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
越智 正之 大阪大学, 理学研究科, 助教 (10734353)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 第一原理計算 / 水素 / 遷移金属酸化物 / 超伝導 |
研究実績の概要 |
固体中で水素は様々な役割を果たしうる。その中で興味深いもののひとつは、アニオンとしての役割である。特に、物性研究の中心的舞台の一つである遷移金属酸化物において、酸素アニオンを水素で置換した遷移金属酸水素化物は、近年、強く注目され始めている。遷移金属酸水素化物において重要な問題のひとつは、酸素と水素という異なるアニオンが規則的に配列するか不規則に配列するか、またそれが微視的にどのような要因で決まっているか、ということである。当該年度は、SrVO2Hという典型的な遷移金属酸水素化物において、酸素と水素の配置が決まる微視的な要因を、第一原理計算を通して明らかにした。計算は酸素と水素の様々な配置パターンの全エネルギーの比較を通して行った。その結果、局所的に水素がtrans配置することが結晶場的な意味での安定性をうむこと、および水素アニオンと酸素アニオンとのサイズの違いをいかした格子定数の変化によって、水素の秩序配置が安定化していることがわかった。また、遷移金属酸水素化物中における非従来型超伝導の理論提案もおこなった。超伝導性の理論評価は、第一原理計算によるバンド計算から出発し、有効模型を構築し、ハバード相互作用を揺らぎ交換近似を用いて考慮した上で、線形化エリアシュベルグ方程式を解くことでおこなった。その結果、水素による結晶場の変化が、多軌道模型における大きな軌道エネルギー差をうむことがわかった。そしてこの大きな軌道エネルギー差が、異種軌道間の散乱を増強することで、超伝導に望ましい電子状態へとつながっていることがわかった。これらの成果は、複数の研究会および学術論文の形で研究発表をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験的にも理論的にもまだ未知の性質の多い酸水素化物について、着実に知見を深めることができている。また理論的な高い物性機能の提案にまで至ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
水素と特異な物性機能の関連についてより理論研究を深めるとともに、新学術領域内の連携を通して新たな水素機能の理論研究にも取り組んでいく。
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