研究実績の概要 |
本年度はプロトン共役電子移動(PCET)型の酸化還元反応を示すレドックス対を用いた熱化学電池について、pH、濃度、酸化還元種などの最適化・一般化を行うと共に、キャリア伝導度や熱伝導度などの測定を行い、その性能を明らかにした。PCETを示すレドックス材料として、本年度はベンズイミダゾール錯体を加えた3種および、非公表の他の化合物に着目した。 バッファーとして用いる支持塩として、クエン酸およびリン酸が大きなプロトン付加エントロピーを有しており、これが高いゼーベック係数に寄与していることを明らかにした。また熱伝導度および電気伝導度測定の結果、ZTを明らかにし、論文として投稿し、採択された(Kobayashi et al., Chem. Eur. J. 2021, 4287)またHot Paperとして採択され、Inside back cover として掲載された。 一方、プロトン共役電子移動反応はpH依存性を示す。そこで、溶液のpHを温度変化させることの出来る高分子(NIPAMとアクリル酸の共重合体ナノ粒子)を用いて、小さな温度変化で大きな電圧を生じさせることで高いゼーベック係数が実現できることを示した(J. Am. Chem. Soc., 2020, 17318)。 山内・石元らとの共同研究については、有機PCET化合物を用いることで安価な化合物で比較的高いゼーベック係数が実現できることを明らかにした。また計算化学の解析により、このゼーベック係数には、酸化チタン表面へのプロトン付加のエントロピーが寄与していることが示唆された。本研究内容は論文投稿中である。
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