研究領域 | 新しい星形成論によるパラダイムシフト:銀河系におけるハビタブル惑星系の開拓史解明 |
研究課題/領域番号 |
19H05068
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田崎 亮 東北大学, 理学研究科, JSPS特別研究員(PD) (60839231)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ダスト整列 / 偏光 / 分子雲コア |
研究実績の概要 |
磁場は星・惑星形成過程において重要な役割を果たすと考えられており、磁場を観測的に制限することは星・惑星形成過程の理解を大きく前進させる。観測的に磁場の強度や構造を探る有力な手段として、星間空間の分野ではダスト整列と呼ばれる現象が広く利用されている。しかし、星・惑星形成領域において、ダストが磁場に対して整列できるかどうかという点は未だよくわかっていない。本研究の目的は、星・惑星形成領域におけるダスト整列過程を理論的に解明し、偏光・偏波観測を用いて星・惑星形成領域の磁場の情報を得る方法を探ることである。
今年度は、まず非球形粒子の偏波放射効率を理解するために、離散双極子近似を用いた数値シミュレーションを実行した。特に、非球形粒子が空隙を持つ場合に、その偏波放射効率がどのような影響を受けるのかについて調査した。その結果、粒子の空隙率を増加させると偏波放射効率が減少することがわかった。さらに、得られた結果は有効媒質近似と呼ばれる近似によって、よく再現可能であることを示した。次に、得られた偏波放射効率を用いて、整列したダスト由来の偏波放射の輻射輸送シミュレーションコードの開発を行った。また分子雲コア内部における不規則形状粒子に働く輻射トルクを計算し、そこからダストの整列効率を求める計算も実施した。得られたダストの整列効率と偏波放射効率、偏光・偏波の輻射輸送計算コードを組み合わせ、分子雲コア由来のダスト整列偏波のダストサイズ依存性を理論的に明らかにした。さらに、得られた計算結果と実際の観測データとの比較を行い、観測された分子雲コアにおけるダスト特性に偏光・偏波観測の観点から制約が与えられた。本研究成果を2編の論文として、査読付きの国際査読誌に論文を投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は、当初の計画では輻射トルクやそれ以外のトルク源に基づくダスト整列シミュレーションのコード開発を行う予定であったが、昨年度中に他の研究チームによる関連論文が発表されたことや、新たに得られた最新の観測データを解釈する必要があったことを背景に、当初2年目に計画していた研究を前倒しして実施した。そのため、初年度に計画されていた研究の進捗についてはやや遅れていると言える。しかし、すでに次年度に計画されていた研究に着手済みであることを考えると、最終的な研究目的の遂行に支障はないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度では、昨年度に着手を始めたダスト整列を考慮した偏光・偏波の輻射輸送シミュレーションのコードを完成させる。現時点では、特定の条件のみで計算が可能であるが、今後はより一般的な条件で利用可能なコードに拡張する予定である。これにより、ダストの整列の状態が与えられた際の円盤や分子雲コアの観測量の予言が可能となる。次に、初年度に行う予定であったダスト整列のシミュレーション・コードの開発を行う。なお、ダスト整列シミュレーションで必要となる不規則形状粒子の輻射トルクの計算はすでに実行済みである。最後に、整列シミュレーションと輻射輸送計算コードを組み合わせることで、星・惑星形成領域でのダスト整列過程を理論的に解き明かす。その上で、偏光・偏波観測から星・惑星形成領域の磁場構造を得る方法を探る。
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