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2019 年度 実績報告書

隕石から探る木星型惑星大移動説

公募研究

研究領域新しい星形成論によるパラダイムシフト:銀河系におけるハビタブル惑星系の開拓史解明
研究課題/領域番号 19H05073
研究機関横浜国立大学

研究代表者

癸生川 陽子  横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70725374)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワード隕石 / 有機物 / 惑星形成
研究実績の概要

太陽系の惑星が形成されてから数億年の間に,木星や土星などの巨大ガス惑星の軌道が大きく変わったという説が理論的研究から提唱されている。それに伴い,小天体の軌道が乱され,太陽系の外側にあった「冷たい小天体」が木星軌道上に引き込まれたと考えられている。冷たい小天体は氷などの揮発性成分を多く含んでいるため,大気圏突入時などに破壊されてしまい,隕石として分析することが困難である。このような脆いものでも,小惑星同士の衝突であれば衝撃が少ない。冷たい小天体が比較的丈夫な小惑星に衝突し,取り込まれ守られた状態であれば,隕石として地球に到達することができると期待される。実際に,冷たい小天体の候補となるような特異的な「捕獲岩」は複数の隕石から見つかっている。このような冷たい小天体の証拠を隕石中に見つけることができれば,理論計算に加えて木星大移動説への物質科学的裏付けとなり,地球惑星科学で最も重要な課題の1つである惑星系の形成過程に関する知見に一石を投じることとなる。
本研究では,普通コンドライト隕石に含まれている捕獲岩試料について,有機物の分子構造と同位体組成に着目した分析を行った。炭素X線吸収端近傍構造(C-XANES)分析の結果,捕獲岩に含まれている有機物は水質変成を受けた炭素質コンドライト隕石に含まれる有機物と類似していることが分かった。また,捕獲岩試料の水素・炭素・窒素同位体及び元素分析の結果,これらの値は,冷たい小天体であるD型小惑星起源と考えられているTagish Lake隕石と類似しており,この捕獲岩も冷たい小天体由来である可能性が高いことが分かった。本研究の結果は,太陽系の外側由来の冷たい小天体が比較的太陽系に近い普通コンドライト母天体領域に取り込まれたことを示しており,巨大惑星移動説を支持するものである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

上記の研究実績については査読付き論文を1報発表済みであり,おおむね順調に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

上記の研究実績では1試料のみしか分析を行っていないため,今後は別の捕獲岩試料についても分析を行い,上記の結果を裏付けるとともに,惑星形成時の物質移動に関する知見を深める。ただし,現在,新型コロナウイルスの影響により,C-XANES分析を行うための放射光施設が閉鎖されている。秋からの再開が見込まれているが,もし再開されなかった場合は代替手法を検討する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Primordial organic matter in the xenolithic clast in the Zag H chondrite: Possible relation to D/P asteroids2020

    • 著者名/発表者名
      Kebukawa Yoko、Zolensky Michael E.、Ito Motoo、Ogawa Nanako O.、Takano Yoshinori、Ohkouchi Naohiko、Nakato Aiko、Suga Hiroki、Takeichi Yasuo、Takahashi Yoshio、Kobayashi Kensei
    • 雑誌名

      Geochimica et Cosmochimica Acta

      巻: 271 ページ: 61~77

    • DOI

      10.1016/j.gca.2019.12.012

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Comparison of FT‐IR spectra of bulk and acid insoluble organic matter in chondritic meteorites: An implication for missing carbon during demineralization2019

    • 著者名/発表者名
      Kebukawa Yoko、Alexander Conel M. O'D.、Cody George D.
    • 雑誌名

      Meteoritics & Planetary Science

      巻: 54 ページ: 1632~1641

    • DOI

      10.1111/maps.13302

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Origin of Jupiter Trojan asteroids: To be explored by OKEANOS2019

    • 著者名/発表者名
      Yoko Kebukawa, Tatsuaki Okada, Motoo Ito, Jun Aoki, Yosuke Kawai, Jun Matsumoto, Noel Grand, Arnaud Buch, Michisato Toyoda, Herve Cottin, Hisayoshi Yurimoto, Hajime Yano, Takahiro Iwata, Osamu Mori
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2019年大会
    • 招待講演
  • [学会発表] Organic matter in carbonaceous chondrite lithologies of Almahata Sitta meteorite, a polymict ureilite2019

    • 著者名/発表者名
      癸生川 陽子, Michael Zolensky, Cyrena Anne Goodrich, 伊藤 元雄, 小川 奈々子, 高野 淑識, 大河内 直彦, 菅 大暉, Matthew Marcus, David Kilcoyne, 大東 琢治, Rahman Zia, Shaddad Muawia, 小林 憲正
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2019年大会
  • [学会発表] Aguas Zarcas (CM2)隕石の有機物分析:Typical CM2 or not?2019

    • 著者名/発表者名
      癸生川陽子,Michael E. Zolensky,大東琢治,近藤正志,伊藤元雄,兒玉優,小林憲正
    • 学会等名
      日本惑星科学会2019年秋季講演会

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公開日: 2021-01-27  

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