研究領域 | 新しい星形成論によるパラダイムシフト:銀河系におけるハビタブル惑星系の開拓史解明 |
研究課題/領域番号 |
19H05074
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
小林 かおり 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (80397166)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 星間分子 / 電波天文学 / マイクロ波分光 / 分子分光学 / データベース |
研究実績の概要 |
高感度高分解能な電波干渉計の登場で、膨大な数のラインが観測されるようになった。比較的簡単な有機分子の場合でも、解析に必要な実験室分光データが存在しないことが珍しくないため、その充実は喫緊の課題となっている。 本研究で特に注目するギ酸メチルは既に星間空間に振動励起状態にある回転遷移も含めて1000本以上もスペクトル線が同定されている。一方、実験室マイクロ波分光の測定データのうち、スペクトルが非常に複雑であるため、量子準位の帰属がついているのは20%以下である。さらなるギ酸メチルの実験・解析の結果は、新たなプローブを与え、星間スペクトルのクリーンアップが可能とする。 本研究では低周波数領域で高い相対強度の信頼性と周波数決定精度を有するチャープパルス・フーリエ変換型マイクロ波(CP-FTMW)分光計による測定結果の相対強度を利用してアプローチしている。国内では本学のみに存在するCP-FTMW分光計は、8-18 GHzまでの領域での回転スペクトル線の測定に安定的に稼働している。この現有の分光計に、パワーアンプ、スイッチ等を組み込み26-40 GHz帯に拡張できるようにCP-FTMW分光計の改良を始めていおり、最終年度に、完成予定である。 並行して、ギ酸メチルのマイクロ波分光とシンクロトロン放射光を用いた高分解能赤外分光のデータの相互相関を利用して解析を進めることに成功した。しかし未帰属な遷移は多数あり、この手法を継続して用いることで、マイクロ波分光と赤外分光双方のデータの帰属解析を進めることができると期待される。今後も従来型のマイクロ波分光による回転スペクトルの測定を継続しつつ、CP-FTMW分光の測定も実施することで、さらに解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チャープパルスーフーリエ変換型マイクロ波分光計の周波数を拡張するための整備は順調に進んでいる。ギ酸メチルの測定も進めており、遠赤外分光データと合わせた解析によってスペクトルの帰属も進展があった。これまでのギ酸メチルの結果についても論文として投稿できている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はチャープパルスーフーリエ変換型マイクロ波分光計の周波数の40 GHzまでの拡張を行う予定である。この装置も併用してギ酸メチルの帰属解析を進める。合わせてメタノールメーザーないしメーザー候補の遷移の周波数が精度が不十分なものについて、測定を実施し、静止周波数として報告する。これらにより将来の天文観測の基本データを与えることを目指す。
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