研究領域 | 新しい星形成論によるパラダイムシフト:銀河系におけるハビタブル惑星系の開拓史解明 |
研究課題/領域番号 |
19H05077
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤井 悠里 名古屋大学, 高等研究院(理), 特任助教 (40815164)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 原始惑星系円盤 / 惑星形成 / 宇宙線 |
研究実績の概要 |
太陽系外惑星系の多様性の理解を目指し、その形成環境に着目した。惑星は、生まれたばかりの星の周りに円盤状に分布するガスの中で生まれると考えられている。この惑星を育むガスでできた天体は、原始惑星系円盤と呼ばれている。我々は、原始惑星系円盤の力学的、そして化学的なふるまいについて明らかにするために研究を進めた。 原始惑星系円盤のガスは宇宙線と呼ばれる高エネルギー粒子や恒星からのX線や紫外線によって弱く電離される。一般に、ガスの電離の度合いは場所によって異なり、それによって、その場所のガスと磁場との相互作用の強さが決まる。磁場との相互作用は、原始惑星系円盤の力学的な進化を駆動する主なメカニズムであると考えられている。また、円盤内の複雑な化学反応網は、主に宇宙線によって円盤の主成分である水素ガスが電離されることによって誘発されることが知られている。つまり、円盤の力学的および化学的な進化を研究する上で、宇宙線によるガスの電離率は必要不可欠である。 星間空間からやってくる宇宙線は、原始惑星系円盤を貫く磁場に沿って円盤の中を伝播すると考えられる。その様子を調べるために、本研究では、まずは原始惑星系円盤の磁気流体力学シミュレーションを行い、宇宙線を伝播させるための媒質を用意した。そして、次に、宇宙線がガスを電離することでそのエネルギーを失いなかがら原始惑星系円盤の中を伝播して行く様子をシミュレーションした。その結果、円盤内部への宇宙線の侵入は非常に困難であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、磁気流体力学シミュレーションを用いて原始惑星系円盤の構造を計算し、宇宙線を伝播させるための媒質の準備を行った。 次に、磁気流体力学シミュレーション結果のスナップショットをバックグラウンドの媒質として、その密度、速度、および磁場の情報を用い て原始惑星系円盤の中での宇宙線粒子の伝播をシミュレーションした。宇宙線粒子のエネルギー損失関数は Padovani et al.(2009, 2018)を使用した。各エネルギーの粒子をそれぞれ異なる初期速度ベクトル、初期位置から投入し、その伝播の様子のシミュレーションを行った。その結果、ほとんどの粒子は円盤内部に侵入しないということが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
当初から、磁場の影響により、従来考えられていたよりも宇宙線が円盤内部に侵入しにくいことを予想していたが、その予想よりもさらに宇宙線の侵入が難しいことが分かった。よって、より高エネルギーの粒子の振る舞いに焦点を当てて研究を進める。また、宇宙線のフラックスの推定には、円盤スケールよりも大きなスケールでの磁場構造を考慮する。
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