研究領域 | 新しい星形成論によるパラダイムシフト:銀河系におけるハビタブル惑星系の開拓史解明 |
研究課題/領域番号 |
19H05084
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
前澤 裕之 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00377780)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 惑星大気 / 金星 / 火星 / ハビタビリティ / ALMA / 電波天文学 / ヘテロダイン分光 / 近赤外中分散分光 |
研究実績の概要 |
系外惑星/地球型惑星の大気環境の普遍的性質を理解する上で、身近な太陽系の地球型惑星の大気環境の掌握(化学反応ネットワーク/物質循環のメカニズム、主星の活動の影響)が鍵を握る。近年、金星の紫外線領域の吸収プロファイルから、硫酸エアロゾルの雲領域近傍に微生物が存在する可能性なども議論されており、地球型惑星のハビタビブルな環境が、太陽の活動・放射、大気ダイナミクス/輸送、大気化学のもとでどの様にバランスしているのか、総合的な理解が求められる。 本研究では口径10mのミリ波望遠鏡SPARTの観測により、金星の上層大気の一酸化炭素が主星(太陽)の活動に対して反相関の応答を示す様子や、主星の影響では説明できない大きな短期的変動を捉えてきた。特に、太陽活動が増加に転じ始めた2020年頃を境にCOの減少傾向を捉えることにも成功した。またALMAを用いた硫化物の高解像度観測の解析を進め、SOとSO2は分布が反相関し、SOは高層で光化学の影響により増加し、SO2は低層からの輸送の影響を受けている様子が捉えられた。これら微量分子の時空間変化は、輸送により塩化物の触媒反応や(光)化学反応が駆動されているため、と考えることで説明可能である。このことをより詳しく理解していくため、金星下層大気のCO、H2O、SO2、OCS、HClも同時観測できるように、近赤外中分散エシェル分光器NICE(東京大学)を、大気透過度が高いチャナントール山頂(標高5600 m)の東京大学アタカマ天文台の口径6.5 m赤外線望遠鏡(TAO)に搭載するためのソフト・ハードウエアの開発を進めた。また、第24期学術大型研究計画のマスタープラン2020として、戦略的火星探査:周回・探査技術実証機による火星宇宙天気・気候・水環境探査計画において、テラヘルツ波分光をいかした、火星大気の物質循環を探る研究・観測のアプローチ・検討を推進した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID19の影響により、野辺山のSPART望遠鏡の立ち上げや運用、アタカマ高地におけるTAO望遠鏡サイトでの近赤外分光計の実装準備や、国内での分光計システムの開発・仕様設計の検討が遅れているため。
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今後の研究の推進方策 |
COVID19の緊急事態宣言等が解除され次第、長野県のSPART望遠鏡の状態の調査や、アタカマ高地におけるTAO望遠鏡サイトの近赤外分光観測装置搭載時の光量調整のフィルターやシーイングモニタなどの設計仕様・導入検討を進める。またSPART望遠鏡とALMA望遠鏡のデータの比較解析を進める。
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