公募研究
本研究の基本となる微粒子集合体を加速する方法の開発を行った.微粒子の集合体を加速するために既存の飛翔体加速装置を利用した.この加速装置は加速ガス(現在は大気圧の空気)に対してチャンバー内を真空にして,圧力差により弾丸をチャンバー内に加速する.飛翔体の設置方法を工夫することにより弾丸の代わりに微粒子集合体を用いることが可能になった.本研究では微粒子の衝突速度がキーとなるため,微粒子集合体がどれほどの速度に加速されているのかを計測することが非常に重要である.弾丸の場合は2本のレーザービームを横切る時にビームが途切れることから,途切れた時刻の時間差により速度を求めている.ところが,微粒子集合体の場合は一粒一粒が小さく,また,集合体としてのバルク密度が低く空隙が大きいためレーザービームの出力がクリアに途切れず,この方法は使えない,そこで,宇宙航空研究開発機構から借用中の高出力レーザーをシート状に拡大し,微粒子集合体がそこを通る際に散乱する光を高速カメラで撮像することによって微粒子集合体の速度を計測する方法を用いることにした.今年度はレーザー光の転送および拡大するための光学系系の物品を購入し,さらに,拡大したレーザーシートを導入するための窓および微粒子集合体の通過によって散乱された光を高速カメラによって観測するための窓を備えた真空チャンバーを購入した.このチャンバーは加速装置および付着試料回収用の別のチャンバーに接続でき,さらに,カメラトリガー用のレーザーをとおす窓もついている.微粒子集合体に対してこの方法により速度計測を行った結果,現在,~ 500 m/sまで加速されていることを確認している.
3: やや遅れている
コロナの影響で大学から活動自粛要請が出されていたため,2020年度は特に前期に実験を行うことができず,加速実験と速度計測技術の開発が遅れた.後期になって速度計測光学系の構築と更新,高速カメラによる撮影を行い,速度の計測を実際に行うことに成功したが,予定していた粉体集合体が衝突・付着した状態を観察するところまでは進まなかった.
現状は加速ガスとして大気圧の空気を用いているが,真空チャンバー内の圧力を変えることによって加速時間が変わるため異なる最終到達速度を得ることが出来る.さらに加速ガスをヘリウムに代えることによってより高速度に加速することも可能になると考えられる.今後は真空チャンバー内の圧力および加速ガスを変えたテストも行う予定である.その後,様々な速度に対応する加速条件(加速ガスの種類と圧力,真空チャンバー内の圧力)を決めていく.また粉体集合体が衝突したあとの状態を電子顕微鏡(SEM)で観察する.できれば付着強度計測技術の開発に進みたい.
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Astrophys. J. Lett.
巻: 899 ページ: L22
10.3847/2041-8213/aba949