公募研究
本研究では、Zr-96を用いたニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊事象を10の27乗年以上の半減期で観測するため、背景事象であるTl-208を95%除去するために使用するチェレンコフ光の位相幾何学情報を直接的に観測することを目的としている。まず、20mLのバイアルにZICOS実験用液体シンチレータの溶媒であるアニソールを充填し、6本の3/8インチ光電子増倍管H3164-12(上昇時間:0.8ns、TTS:0.5ns)を束ねて設置して、外部からSr-90の電子を入射させ、アニソール中の電子から発生するチェレンコフ光の観測を行った。入射電子の入射角を変化させると、対応する光電子増倍管の光量の変化を観測することができたことから、チェレンコフ光の感度を確認するとともに位相幾何学的な振る舞いを観測することができた。次に、電子が放出するシンチレーション光とチェレンコフ光を、信号の波形を用いて分別する手法を開発した。使用する3/8インチ光電子増倍管をZICOS実験用液体シンチレータを充填した20mLバイアルに8本接続し、Co-60、Cs-137、Ba-133、Co-57からのエネルギーの異なるガンマ線を入射させ、V1751デジタイザを用いてパルス波形を計測したところ、信号のピークの時間を60nsとしたときに57.5nsから58.5nsの時間帯に差異を観測することができたが、手法を開発するまでには至らなかった。次年度にパルス波形分別法の開発とともに、位相幾何学情報を観測するための特製検出器を制作し、特定のガンマ線を入射させて、100度後方にコンプトン散乱したガンマ線を検出することにより得られる単一方向・単一エネルギーの電子から放射するチェレンコフ光を観測し、位相幾何学情報である平均角を計測する計画である。
2: おおむね順調に進展している
研究に使用する3/8インチ光電子増倍管H3164-12を用いてシンチレーション光内にチェレンコフ光の有無を判断するパルス波形分別法の開発は完了していないが、次年度に購入するV1742デジタイザを使用すれば0.2nsecの時間分解能で波形観測が可能であること、更に2インチの光電子増倍管H2431-50ではパルス波形分別法が完成していることから、H3164-12用のパルス波形分別法も開発できると考えているため。また、本年度に予定していたチェレンコフ光の観測と、位相幾何学の有効性を確認できたため。
次年度は、26本の3/8インチ光電子増倍管H3164-12を配置した半球状フラスコ型検出器HUNI-ZICOSをを用いて、検出器内に液体シンチレータの溶媒であるアニソールを充填し、Sr-90のベータ線や、Y-88からの1.836/0.898MeVのガンマ線を入射させ、100度後方にコンプトン散乱したガンマ線を検出することにより得られる1.484/0.605MeVの単一方向・単一エネルギーの電子から放射するチェレンコフ光を観測し、位相幾何学情報である平均角を計測する計画である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (4件)
Journal of Physics: Conference Series
巻: 1468 ページ: 12139
10.1088/1742-6596/1468/1/012139
BULLETIN OF MIYAGI UNIVERSITY OF EDUCATION
巻: 54 ページ: 169-176
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