研究領域 | ニュートリノで拓く素粒子と宇宙 |
研究課題/領域番号 |
19H05094
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
飯田 崇史 筑波大学, 数理物質系, 助教 (40722905)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 水シンチレータ / フッ素系界面活性剤 / ニュートリノ検出器 |
研究実績の概要 |
水をベースとした液体シンチレータ(水シンチレータ)は、実用化できればその安全性やコスト面等から素粒子実験のみならず、医療応用や原子力応用等の幅広い分野で活躍が期待される。そのため、海外も含めて水シンチレータの開発を進めている研究グループは複数存在している。発光が確認された水シンチレータは多くあるものの、透明度の低さが原因で実用化には至っていない。 水シンチレータは、水を溶媒として有機発光剤とそれを溶かすための界面活性剤によって構成されている。水溶液内部では発光剤を界面活性剤が囲んだミセルの状態が形成されている。水と界面活性剤の屈折率の違い(1.33と1.6くらい)によって、ミセル表面で全反射が起き、光が散乱されて透過率を下げているものと考えられる。そこで本研究では、屈折率が水に近いフッ素系界面活性剤(屈折率1.3-14くらい)を用いて、これまでよりも透明度の高い水シンチレータの開発を目指している。将来的には、それを用いた大型ニュートリノ観測実験の計画立案を検討していく。 初年度の今年は、まず筑波大学に水シンチレータ作成および評価用の環境を整えた。特に液体の透過率を測定するための分光光度計(日立ハイテク社・U3900)を導入し、作成した水シンチレータの透過率測定が可能になった。さらにフッ素系を含む複数種類の界面活性剤を入手し、それを水に溶かしたときの透過率測定を行い、界面活性剤の選別に着手した。その結果、炭化水素系界面活性剤のドデシル硫酸ナトリウムと、詳細は伏せるが複数のフッ素系界面活性剤が良い透過率を示した。この成果は2019年11月にイギリスで行われたIEEE-NSS/MICという国際会議で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画としては、1年目に透過率の優れた界面活性剤を選別し、2年目にはそれを用いて作成した水シンチレータの性能評価を行っていく予定である。実際に1年目に透過率と発光量の測定を行うための環境整備を行うことが出来た。また、いくつかの界面活性剤で透過率の測定を行い、良いものと悪いものの選別に着手しており、研究はおおむね予定通りに進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究結果によって、炭化水素系界面活性剤のドデシル硫酸ナトリウムと、複数のフッ素系界面活性剤が良い透過率を示した。今後は、これらの界面活性剤を中心に水シンチレータを合成し、発光量や透過率をより詳細に調べ、優れた性能の水シンチレータを開発する。また、得られた成果を論文として発表する。
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