研究領域 | ニュートリノで拓く素粒子と宇宙 |
研究課題/領域番号 |
19H05098
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田中 雅光 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10377864)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 超伝導検出器 / 中性子ベータ崩壊 / 角相関項 / 超伝導トンネル接合 / 超伝導エレクトロニクス |
研究実績の概要 |
本研究では、中性子ベータ崩壊のニュートリノ・電子角相関項を決定するための、反跳陽子のエネルギースペクトル測定実験を念頭に、超伝導トンネル素子(STJ)による精密測定実験の可能性を明らかにすることを目的としている。具体的には、エネルギーが極めて低い陽子をSTJ検出器に入射した場合について応答実験を行い、大規模な実験の可能性の議論や課題の抽出、今後の実験設計を進める計画としている。 2019年度は、超伝導検出器を用いた低エネルギー陽子検出実験のセットアップ構築を進めた。陽子を発生するイオン源と超伝導検出器を納めた冷凍器の間の経路で磁場をかけ、陽子の軌道を曲げてコリメートすることでエネルギーを選択できるようにするため、ベンディング用チャンバーとマグネットの設計した。このベンディング用チャンバーは、陽子源からの熱輻射を避けるためにも重要である。計算検討の結果、およそ200ガウスの磁場を発生させることで、所望のエネルギーの陽子を選択できる見込みとなり、製作を行った。また、冷凍器への液体ヘリウムの注入に問題が生じたため、移送方法の改善を行った。このほか、冷凍機内への温度計の配置や、読み出しに必要な増幅器などのエレクトロニクスの整備を進めた。 今年度はまた、新学術領域内の研究会及び超伝導検出器を利用する計画研究班のワークショップに参加し、超伝導エレクトロニクスの活用することによる新たな応用の可能性を領域内外の研究者と議論した。海外研究者との連携による検討結果について論文投稿を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
冷凍機内への温度素子の配置やベンディング用チャンバーとマグネットの製作を終えるなど、実験のセットアップ構築を計画に沿って進めている。冷凍器内に液体ヘリウムが注入できない問題が生じ、その解決を優先したため、まだ検出器を冷却しての実験が行えていないが、問題の特定と改善を進めており、概ね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
現在、実験を一時停止しているが、実験再開後は読み出しのエレクトロニクスの構築を完了し、冷凍器を用いて、まずは超伝導検出器の試験を行う。2020年度は、超伝導検出器に陽子を導入する実験系の構築を完了し、様々な陽子エネルギーと入射角に対して超伝導検出器が出力するスペクトルを取得する計画である。 なお、超伝導検出器にはいくつか種類があるが、物理の理解と解析の容易さから、STJを出発点としている。ただし、マイクロ波の取り扱いが必要だが、よりアレイ化に適した、マイクロ波力学インダクタンス検出器(MKID)や、一般にはエネルギー分解能がないと言われる細線検出器を用いて陽子が利用可能かについても検討を進める。実験の可能性を広げるには、検出器だけでなく、信号処理回路にも超伝導エレクトロニクスを利用することが有効であると考えられる。学術領域内外の研究者と広く交流し、その検討も行う。
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