ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊(0ν2β崩壊)が見つかれば、宇宙の物質・反物質非対称性の謎を解明する大きな手掛かりとなる。私は、ベータ線の飛行時間を超精密に測定する新しい手法を用いることで、世界最高感度での0ν2β崩壊の探索を目指している。しかし、大面積を高時間分解能の光検出器で覆う必要があるため、私は荷電粒子検出器RPC(Resistive Plate Chamber)を応用して、安価・大面積・高時間分解能の3拍子揃った新種のガス電子増幅型光検出器「RPC-PMT」を考案した。本研究では、RPC-PMTに適したガス中でも安定で高い量子効率を持つ光電面を選別するとともに、RPC-PMTのガス電子増幅に関わる性能を評価し、他の光電子増倍機構よりも優れていることを示す。 高い量子効率を持つ光電面はアルカリ金属を含むので、まずPRC-PMTで使用するガスがアルカリ金属を変性させないことを確認する必要がある。従来使用してきたR134aとSF6の混合ガスはアルカリ金属を変性させることがわかったので、先行研究で実績のあるNeとCF4の混合ガスを使用することにした。そして、バイアルカリ光電面を持つ光電管に高抵抗板電極を導入し、NeとCF4の混合ガスを封止したRPC-PMT試作機を製作した。 また、ガス電子増幅に関わる性能を、動作実績のあるLaB6光電面とR134aとSF6の混合ガスのRPC-PMT試作機を用いて評価した。ピコ秒パルスレーザーを用いた1光子の検出において、出力が大きい信号については、レーザーのパルス幅と読み出し回路の時間分解能による幅と同じ40ピコ秒の時間分解能が得られた。しかし、出力が一定以上になると、信号タイミングがずれることがわかり、その原因を波形データを使って調査している。ストリーマ放電を含む信号については、波形を解析することによりその影響を除くことができた。
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